「倫理・道徳・品格の向上」の実践に向けて(3)
戦後日本の歪みを検証、惨憺たる教育荒廃を問う


【加藤】 現代社会では、大人が子供にバカにされるというような光景が多々見受けられます。これは家庭の中で母親が父親をバカにするとか、またこのような問題を何も解決できない親が子供を躾(しつ)けることができないことに原因があるのではないかと思います。

 先生が先ほど申されたように、私は子供の3才までの教育と言うのは、「三つ児の魂百までも」ではありませんが、自分の子供に善悪の判断をしっかりと教えるのは親の役目だと思うんです。しかし日本では昔から中華思想にある性善説を信じて、自分の子供は善だと考えてきたことが、親が子供を躾けると言う意識を失ってしまった。だから子供の人格形成に最も必要な躾ができないのでないかと思います。するとそのような子供はある程度の年代になると親を甘く見てしまう。

 例えば、自分たちの世代の夫婦であれば、嫁さんがお父さんのことをバカにするとか、先ほど先生が言ったように教育現場でも先生のことをあまり怖いと思わないとか、言うことを聞かないというのが現実だと思うんです、まずこれを是正しなければならないというのが私たちの基本方針なんです。

 先ほどの国家百年の大計ではありませんが、今の子供は0才児、また小学校の低学年にしても、その子供が立派な基本的姿勢を持つまでには15年から20年はかかると思います。その間、私たちのような責任ある大人は子供に対してどのように対処すればいいのか、また教育基本法改正を例にあげれば、親が新しい教育基本法の下で、立派な道徳心を養えるか養えないかという問題がありますが、私たちはそのような問題についてどのような方法で運動に取り組んだらいいのかと考えています。

 これからは小池先生の指導を仰ぎながら様々な方法で倫理、道徳、品格の向上を世間に訴えたり、インターネット上を通じてアピールして行きたいと思いますが、より多くに人たちの理解を得るにはどんな方法があるのでしょうか。またそういうことを通して地域社会と密接した活動に取り組むことが大切ではないのかと思いますがその辺について教えて頂きたいと思います。


【小池】
 私は先日、中野区の老人クラブで講演しましたが、この講演がとてもやりやすかったんです。それは講演のタイトルが、「お年寄りの知恵に学ぶ教育再生」だったんです。これは私がいまやってることと同じなんです。参加した皆さん真剣でした。お年寄りが教育基本法改正に関心を持ってることが分かったことは大変ありがたいことです。これも地域に密着した運動のひとつですね。

 また、0才児や低学年と言う話がありましたが、子供の幼児教育は3才では遅すぎます。「三つ児の魂百までも」という諺がありますが、昔は数え年で言いましたから3才と言うのは実際に2才です。ですから3才では遅いですね、幼児教育は0才から2才までです。その証拠は、幼稚園の園長や保育園の園長と話をするとわかります。幼稚園や保育園は満3才で入園します。3才・4才が年少、4才・5才が年中、5才・6才の年長が保育園や幼稚園にいるんです。どこの園長も子供が幼稚園に来た時はもう手のつけようがないと、同じことを言います。幼稚園児500人、保育園児200人がいる園長と会いましたが、幼稚園にくる子はもう手の施しようがない。言うこと聞かない、園長が何を言ったって誰も聞かない。学級崩壊はすでに幼稚園からはじまってるって言うんです。

 さっき体罰の話しがあったけどね、赤ちゃんは11ヶ月位になると立ちあがって物を取ろうとするようになります。それを親が危ないというと子供はイャーと言うんです、ちょうど11ヶ月か12ヶ月でイャーと言んです。物が欲しいからですね、私は、そういう時は親にダメッと言わせて引っ叩かせます。これが正式ですね、それから子供は足をバタバタするんですね、これは子供が思うようにならないから親に怒ってるんですが、そしたら私は親につねれと怒鳴るんです。すると親はそっとつねるんですね、私はそれをダメ、あざができるまでつねれと言うんです。すると親は泣き泣きキュッとつねってます。

  要するに良し悪しを教える時は、最初に言葉でダメッて怒るんです。もし手でやったら手をつねる、足でやったら足をつねる、何とかって口で反抗したら口をつねる、私はそれを強くやれというんです。そうすると一発で言わなくなる、子供の躾けは蓄犬と同じなんです。それが2才半になるともうダメですね。泣き喚いて大変なんです。もう言うこと聞かない。だから私はそういう親には「あんたはもう死ぬまで親不孝されなさい」と言んです。それは親に子供をしっかり躾けて欲しいから。

 このように「三つ児魂百までも」という諺の通り、正しい教育をすれば、教育基本法の改正よりも、もっと早道で効果は抜群なんです。それから子供はとにかく面倒見なければいけません。一番大切なことはあの母乳です。1歳までは牛乳でなく母乳を飲ませるんです。母乳の子は、親とのコミニュケーションができるから自閉症や不登校になりません。牛乳の子が自閉症や不登校になるんです。牛乳の子は誰を母親と思いますか、母乳を飲む子はママの顔見て飲んでるんです。牛乳の子はママの顔ではなくて哺乳ビン見てるんです。その子には哺乳ビンが親なんです。それでは子豚や子牛と一緒でしょ。私は教室でそんな話を一日中やってるんですが、加藤さんがおっしゃったように親と子供が平等だとか、先生と生徒が平等だなんてとんでもありません。親と言うのは、どんなに悪くても親なんです、先生は子供に命令と教育をするんです。それを子供と親が平等だとか、先生と生徒が仲良くしろなんてとんでもない、権威がなきゃダメなんです。そういうことを教えければいけないんです。

  子供は親の命令を聞かなければいけない、生徒は先生の命令を聞かなければいけないと教えなければいけないんです。ライオンの親とライオンの子が平等だと言いますか、このような教育方法は誰でもできますよ、皆さんも私の真似をしてやって御覧なさい。場所は学校の一部屋を借りればできます。教材は私が全部無料で出しますよ。そうしなければ日本は直らない、だから私は模範を示してるんです。今一番言ってるのは、昭和35年位から40年位に、何千何万と言う自閉症児が出てきたということです。私は昭和50年ごろから全国を回っていますからいつもこう言うんです。一番目は、昔は地震・雷・火事・親父、それが、地震・雷・火事・マッカーサーに変わりました。

 二番目は昭和35年ごろから結婚する女性が旦那を選ぶ時、家付き・カー付き、ババア抜き、と言うのがはやりました。嫁に行く時、結婚相手の親と同居することを嫌がると、親は仕方がないからマンションかなんかを買ってやるんです。そうすると結婚相手には家がある、車を持ってる、ババアはいない、要するに、お婆ちゃんがいるとうるさいから、嫁にいかないと言ったんです。

 ではお婆ちゃんがいないとどうなるのかと言うと、子供が軒並み自閉症になるんです。ですから私は自分の本を教材にして授業してるんですが、その時に「あんたたちはお婆ちゃんを抜いたから不幸になったんだ」と言うんです。イジメも不登校も、要するにニートもお婆ちゃんの知恵を貰っていればならないんです。お年寄りをバカにするからバチが当たったんですね、問題は秩序ですよ。親と子、先生と生徒は秩序、秩序のないところに文明はありません、そういうことを誰かが言わなければいけません。だから、ここでみなさんが言う体罰に変わる規律を作るというのはとても良い話です。また村の子供たちを家と部落が皆で協力して良い子にするには、どんな方法があるのかっていうけど、それは一杯あるじゃないですか、昔は、親父の事を家長と言いました。家の中の大きな柱を大黒柱と言いましたが、家庭の大黒柱は父親じゃないですか、その父親はお爺ちゃんから受け継いでいるし、お爺ちゃんはひい爺ちゃんから受け継ぎながら代々伝わってるんです。それを代表しているのがお婆ちゃんです。そういうことをずーと受け継いでいるのが娘、嫁、お婆ちゃんなんです。だから嫁も、娘も、お婆ちゃんからこの知恵を貰わなければ子育てできないのです。その証拠は家庭にお婆ちゃんがいた昭和三十年ぐらいまでは自閉症はなかったんです。不登校もなかったんです。授業中にうろうろ歩けば教師が引っ叩いたわけです、そうすると子供は二度としなくなりますよ、ところが今の先生は子供を引っ叩くことができないじゃないですか。


【塚田】
 本当ですね。私が子供のころは、親も厳しかったし、学校にも怖い先生がいていたずらすれば叩かれました。でも家に帰ればおばあさんがいて、何でも話しを聞いてくれました。同級生の家も同じでしたからそれが当たり前だったですね。


【小池】
 ところが、今は子供を注意しただけでも家の子は悪くないと言われるじゃないですか、私は学者ですからいろいろなおもしろいことやるんです。

 幼稚園の子供が喧嘩して先生に怒られた2人の子供が家に帰って怒られたことをどのように親に報告をするかについて調べたことがあるんです。さっき加藤さんが言った性善説ですよ、4歳の子供が親に完璧な嘘をつきます、それはもう天才的、何とかちゃんが悪いことをして私が怒られたと、ものの見事に嘘をつきます。親はその通りだと思って先生のところに怒鳴り込んでくるんです。家の子は何もしないのに先生に怒られたってね、そんな子供が何で純情なんですか。


【大久保】
 教育方法を間違えると本当に怖いですね。


【小池】 そうなんです。それで私は方法変えて、「お婆ちゃんの知恵と読書に学ぶ満点子育て法」って言う講義をしてるんです。私の書いたその本は一昨年から本屋さんで売られてます。


【亀田】 何と言う本なのですか。


頭が良くなる絵本の読み方
(著者:西村健)

【小池】 「頭が良くなる絵本の読み方」です。大きな本屋行けばどこでも売ってます、ところがこれは少し難しいんです。こんど出る本は、「かつての日本の子育てはこんなに良かった」と言うんです。それと今年から連載をはじめましたが、今度は安倍さんのお陰で教育基本法が改正されれば、日本の教育が間違っていたということが分かってくるので、四、五年したら私の言う通りになると思いますが、その間に、何百万人と言う子供が悪いことをするし、不登校の子どももいるし、イジメも続く訳ですから早く手を打って直さなくてはいけない。それに一番早いのは教育後援会をつくることですね。


【山崎】 
今日の座談会に出席している人はそれぞれ年代が違うから、子供の時の先生の教え方にも違いがあったと思いますが、私たちの時代の先生は厳しかった。授業中にいたずらすれば教室の後や廊下に立たされたし、宿題を忘れれば連帯責任だといって皆で校庭を走らされました。先生に殴られるなんてことは当たり前だし、時には往復ビンタが飛んできましたよ、でも勉強が遅れたりした子には、それなりに別の方法を講じたり、テストの点が低い子たちには夜の八時ぐらいまでですがわかるまで教えてましたね。今思うと先生が情熱的でした。


【小池】
 そんな教師いましたか、すごいな、それはすごい先生だ。


【山崎】
 私は今もその先生感謝してるんです。よくグランドを走らされたから、こんなに丈夫な身体になりました。それから毎週日曜日の宿題は、当用漢字(八八一字)の書き取りと、絵を一枚描いていかなければいけない。やってかないと次の週は倍になるんです。自然に漢字を覚えますよね。


【杉山】
 いや、同じことでね、私はあなたと少ししか変わらないと思うけど、やっぱりあの当時の日教組の教育は結構情熱的だったんだよ。


【小池】
 そうそう、うんうん。


【杉山】
 一時ね、それこそ引っ叩いたりしてね、要するに我々がいうような教育をやってたんですが、それをすると直ぐ親から文句はくるし、先生は殆ど抵抗できなかったから今のような状態が生まれてしまったんだけど、戦後の一部の教師はやっぱり骨があったし教師と言う職業に誇りを持ってたと思います。


【小池】
 そうなんです、そういう教育は戦後10年はもったんです。昭和30年まではもちました。だから30年までは悪い子は殆どいませんでした。その後に中卒の子が金の卵と言われてわーっと東京に出て行ったんですが、その子たちが結婚し始めたころからダメになったんです。昭和35年から40年の間に急速に悪くなりました。私は決してその子たちが悪いと言っているのではありませんよ。それで私は教育荒廃の元凶をずっと講演してきたんです。さっき亀田さんが、やっと先生の出番がきましたね、とおっしゃったけど、本当にやっと出番が来たというところです。


【加藤】
 最近になって教育問題に動きがかかりました。これは国民の意思がそこまで高まったというか、ようやく時期が到来して窓口が開いたように思います。


【小池】
 そうですね。私がずーっとこの問題をやってきたけど、とにかく50年経ったら世の中変わるんですよ、少し遅れましたけど60年で変わってきたじゃないですか、今度は早いですよ、変わってきたから。


【亀田】
 60年と言いますけど、昭和27年までは日本はアメリカの統治下にありましたから実際に主権回復してから54年しか経っていません。


【杉山】
 そう、実際には50年ということだよね。


【小池】
 ところで、ペンは剣より強しと言いますが、マッカーサーは日本をやっつけるには、「100万の軍隊がいる」と言ったんです。日本をやっつけるのに100万の大群がいると、ところが共産党幹部は「武力でやっつける必要はない、教育をとればいいんだ」と言ったんです。教育をとれば日本は自然に共産党になるんだと、だから日教組たちが教育を牛耳ってたんです。私ここで発表してもいいと思いますが、国は教育を全部左翼に任せたんです。見てください教育問題を本気でやった総理大臣は一人もいません。東京都庁だって社会党、共産党に占領されたし、日本の教育のずーっと日教組に占領されているじゃないですか、口先だけですよ教育が大事だと言うのは、五年もやった小泉さんだってできなかったんです。これは教育問題を軽視してるんですよ、だからその悪影響がずーっと残ってる。私が書いた「30年前に日教組と教育基本法を骨抜きにした本」を去年出したんですが、まだまだ関心はうすいです。


【大久保】
 ところで先生の本に、アメリカのレーガン大統領とか、イギリスのサッチャー首相とか、ドイツのアデナウアー首相のことをお書きになっていますが、あの方たちは日本の教育をどのように評価してるんですか。



『道徳読本』(1993)原題「The Book of Virtues:A Treasury of Great Moral Stories」
3000万部のベストセラーになる。

※注◆ウィリアム・J・ベネット(William J. Bennett)
レーガン政権で1985年から1988年まで教育長官として官僚の一員を勤める。

【小池】 その話しが出ると思って資料を持ってきました。私の家にアメリカのタイムが来たと話したでしょう、ここに資料をコピーしてきましたが、ザ・ブックオブ・ブラチューズという本です。モトギ先生と言う東大出の人ですが、英文学者ではないんだけど、アメリカで英語を勉強して、アメリカで一人で日本の本を英語に翻訳してるんです。私はこのモトギさんと四年位前に教育委員会で一緒になりました。そこでモトギさんの本と私の本を交換したんですが、彼がアメリカに道徳読本ザ・ブックオブ・ブラチューズというのが三千万部売れてると言うんです。そしてこの本は日本の修身教科書をまねているみたいだと言うので、私が、どのようにまねてるのか、と聞いたんです。(ここで小池先生はカバンの中をのぞいてなにかを探している)

 この書類です、これがその本の目次で裏に私の修身の教科書が載ってます。

 この本は、840ページあって実際にはこんな厚いんです。1章から10章までありますが10章のフェイスは宗教ですね信仰です。日本の教科書には宗教が載ってませんから、10章を除いた1章から9章までは全部私の本の直訳なんです。この1章のセルフデスプリンは、自分の行いを律する自己規律、これはアメリカのザ・ブックオブ・ブラチューズの一部分を私が翻訳しましたが、アメリカではこの本を日本人が五人ぐらいで翻訳したんです。これを私が翻訳すれば似せられるが、アメリカ側の翻訳なんです。それで私はその翻訳者に会いました。翻訳者に会って私の話しは出ていなかったかと聞いたんですが、出てませんって言うので私は英語の本を全部読んだんです。そしたら私の名前が載らない理由が書いてありました。

  この本を書いたのはベネットさん(※注)というレーガン大統領の文部大臣ですが、本をまとめる時の心構えがあったんです。ひとつは著作権のない物にしたい、私の本には著作権がないのです。それは私の文書でなく元は国定教科書ですから、私の本を使う時は編集権はあるんだけど著作権はないんです。もうひとつは私の本の中身をまねると翻訳しなければなりません。そこでこの本の中身はイソップ物語なんですね。イソップ物語と修身は良く似てるんです。ウソをついたらいけないとか色々ありますから、多分イソップ 物語と聖書物語を入れたと思いますが、タイトルは私の本なんです。日本の修身と教育勅語と同じことをこの本に書いてくれたんです。

  1年に300万部売れたことにビックリしたアメリカの学者たちが調べたら、これはアメリカの本じゃないってばれたんです。これはジャパンの修身だって、それでタイムが私のところに来たんです。その時の記事に私の授業が載ったんですが、家に来た新聞記者があんたは有名だからアメリカで知らない学者はいないって言うんです。私の本が昭和45年にワシントンのアメリカ図書館に並んだのは知ってたから、それで有名なのかと思ってたんですが、今度はドイツの大学教授が来たんです。何で来たのと聞くと、ずっとドイツで私の調査やってたが、どうしても本人に会いたくてきたと言うんです。その大学の教授と三時間ぐらい話しましたが本当に日本に来て良かったって、私の事を褒めてるんですが私を褒めてるということは日本の修身と教育勅語を褒めていると言うことなんですね。こんなに奥が深いと思わなかったと、言うんですね。私はそれまでドイツの大学教授が何しに来たのか分からなかったんです。アメリカの方は分かったけど、そこで私がこの現物を取り寄せて読んでみたら、この本が全米でナンバー1ベストセラー、道徳読本の賞賛、一番がタイムでしょ、二番、三番、四番がマーガレット・サッチャーです。マーガレット・サッチャーが絶賛しているので、最初はヨーロッパの人間がビックリして、続いてアメリカでビックリしたんですね。それで今度はサッチャーさんが推薦しているものだからとその教授が調べたら、これはアメリカの本じゃない、ベネットさんの本でもない。これジャパンの修身だと分かったんです。これが十年前なんですよ。それでドイツの学者が私の家に来たんです。でもこれを知ってる人は殆どいません。中身も全部調べたんですが、著者は日本では分からなかったのでアメリカのインターネットで調べたら分かったんです。そこに私の事が書いてありました。こんなにすごい日本の修身を日本では封建的だとか、日本の修身は軍国主義だとか、何たることだと思いますよ。

 日本では今でも修身と言わない。新しい道徳なんて言ってるんですからね。でも教育勅語は教育勅語、修身は修身なんですよ。


(4)へ続く
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