「自然と共生 環境と調和」
原発から自然エネルギー発電に転換を求める 要望書公開

更新日:平成23年6月1日

 私どもはこの度の福島第一原発の放射線漏れ事故に鑑み、全国の知事に今後のエネルギー行政の見直し、再生可能な自然エネルギー発電導入を訴える要望書(配達証明付)を送付しました。

 又、菅直人首相、海江田万里経済産業大臣をはじめ全てに政党党首にも要望書(配達証明付)を送付しました。

 つきましては全国の知事に送付した要望書を公開します。


要 望 書
可愛い子孫たちの未来を護るために!

平成23年5月30日
日本青年社


 貴職には於かれては、一都一道二府四十三県の各自治体の行政を司る信頼厚き知事として日々ご精励なされていることと拝察申し上げます。

 又、この度の東日本大地震による被災地の知事の方々をはじめ被災された多くの方々に心からお見舞い申し上げます。


 私どもは、平成十二年に「自然と共生 環境と調和」のスローガンの下、「地球温暖化防止と自然環境回復を訴える要望書」を全国の自治体に呈上した日本青年社であります。この度は戦後最大の国難と言われる大地震と大津波による東京電力の福島第一原発事故に鑑み、一国民として今後日本の電力は海外から輸入する化石燃料やウランなどの資源に依存するのではなく、政府と自治体が一体となってエネルギー行政を見直し、一度事故が起きれば人間と自然環境に甚大な被害を及してやまないリスクを内包する原発を縮小し、私どもが予てより提唱している豊かな自然環境回復と国民が安心することのできる、無限な自然の恵みから受けることのできる再生可能な自然エネルギー発電に切り替えることが絶対不可欠であると考え本要望書を呈上致した次第であります。


  扨、わが国が保有する商業用原発は、昭和二十年代後半期に導入されてから半世紀を経過する中で、世界三位と言う54基の原発が存在し、その原発が電力の30パーセントを補っていますが、何時の時代も原発建設には賛否両論が叫ばれてきたことは言うまでもありません。すでに原発が所在する自治体は、国が安い原発、安全な原発という安全神話を前面に推し出した国策のもとに、地元の経済効果を考慮して受け入れてきました。そしてその裏に多くの利権が絡んでいたことも事実ですが、その原発が戦後日本の経済を支え、国民生活に大きな恩恵を与えてきたことも事実であります。しかしながら、この度の福島第一原発の事故は、国が国民に信じ込ませてきた安全神話を根底から覆したばかりでなく、世界の国々を震撼させるという最悪の事態を迎えたまま未だ収束を見ることができません。そのような折の5月6日、菅直人首相が浜岡原発の停止を指示したことに鑑みれば、原発がいかに大きなリスクをもたらす恐ろしい存在であるかということは言を待つまでもありません。とは申せ、現状において原発を全て廃止せよ、というのは余りにも唐突であり無理な話であります。現在、わが国で稼動する原発全て廃止すれば、日本経済は破綻の憂き目を見ることになるでしょう。ですから、現状においては必要に応じて稼動せざるを得ないわけですが、これからの電力については、全てを原発に依存するのではなく、国と自治体が一体となって再生可能な自然エネルギーを利用した発電所に切り替えていかなければならないと考えます。


  いうなればこの度の原発事故は、科学の進歩と利便を追求するがあまり、古来より自然界から受ける豊かな恵みと、想像に絶する自然の恐ろしさを喪失してきた私たち人間に突きつけられた警告と受け止めるべきであり、今後は無限の資源である自然エネルギーを利用した発電システムを中心にした電力発電に切り替えるべきであると考えます。

 又、自然エネルギー発電に関するわが国の技術は世界に誇るべき水準であると言っても決して過言ではなく、海外ではメイドイン・ジャパン製の風力や地熱による自然エネルギー発電所が稼動しています。しかしながら残念なことにわが国における自然エネルギー発電の稼働率は、欧米諸国に比べると、その保有率は一割にも満たないのが現状です。その理由は地熱発電の場合は国立公園法とか景観などの法規制が掛かっていたり、風力は低周波や騒音などのネックとなってコスト面に問題があるようですが、これらの問題は今まで原発に費やしてきた数十兆円という設備投資や地域対策費と開発研究費を自然エネルギー発電に向けた建設予算に組み替へて、既に日本が持っている世界有数の技術を駆使すれば実現可能になるのではないかと思います。

 この再生可能な自然エネルギーによる発電システムの代表的なものは太陽光、風力、地熱発、バイオマス(生物資源)などがありますが、これらのエネルギー資源は、化石燃料やウラン燃料と違って地球環境を破壊したり、人体に悪影響を与えるといったリスクはなく、その資源には限りもありません。特に風力発電は夜間でも発電できるため世界的でも普及しており、わが国で心配される低周波や騒音被害などは、四方海に囲まれている海洋国家であるわが国では、地上ではなく海上を利用した発電装置を設置すれば解決できることでしょう。太陽光発電は太陽光パネルを設置する広い土地は、国有地である山腹の傾斜地や調整区域を利用することも可能であり、それ以外には工場の屋上や各家庭の屋根に太陽光パネルを設置することができます。又これらの発電システムについては、日照時間や風力などの気象条件によって、発電量のばらつきがあるなどの問題点がありますが、過去の原発建設に掛けてきた莫大な設備投資や地域に必要な地域対策費に比べれば、わが国の電力供給源を自然エネルギー発電に変えることによって、そのコストは現在より安くすることは可能ではないかということです。地熱発電についても地元の理解と法整備をすることで建設は可能ですし、その技術はすでに日本にあるのです。またバイオマス発電を導入することで毎日排出される膨大な可燃ごみ、家畜の糞尿、また山林の間伐材や木屑などを利用することが可能となり、地域によってはその恩恵を受けて、公共施設の給湯などに利用することもできることから、自治体の清掃行政をはじめとする地域行政にも大きなメリットがありますので、国と自治体はこの辺も含めて、真剣に研究開発に力を入れれば十分可能です。

 私たち人間は地球上の生態系の一部にしか過ぎない存在でありながら、豊かな経済と便利さを追求するがために豊かな自然環境を破壊し続けたばかりでなく、ついには人間そのものの存亡を危惧しなければならない現実を迎えた今、改めて生命の大切さを考え直さなければなりません。

 そしてこの自然豊かな美しい地球を未来に生きる可愛い子供たちに譲り渡していくことが今に生きる私たちの責務であると考えます。

  貴職にはぜひ以上のことも今後の電力政策に組み入れて、ウランや化石燃料を使用する原発や火力発電のあり方を見直し、再生可能な自然エネルギーを無限に利用することのできる発電施設の建設を導入することを左記の通り要望します。


一、現在54基ある原発をこれ以上増やすことなく、今後は自然エネルギーを利用した発電所を普及させ、将来的には、わが国の発電所全てを再生可能な自然エネルギー(風力・太陽光・地熱、バイオマスなど)を利用した発電所に切り替えるための研究開発に取り組んで頂きたい。


一、福島第一原発の放射能漏れ事故から二ヶ月ほど経過したころから、にわかに太陽光発電や地熱発電のことが話題になり始めており、菅直人首相も フランスで開催された主要国(G8)首脳会議や経済開発協力機構(OECD)などの演説で「家屋への太陽光パネル設置1000万戸」という具体的な目標を掲げたり、化石燃料と原子力中心だったエネルギー政策を、自然エネルギーと省エネルギーを加えた「4本柱」構想を示して、2020年代には太陽光や風力を利用した自然エネルギー発電の割合を20パーセントにするとの目標を掲げましたが、鳩山由紀夫前首相がアメリカで演説した過度な二酸化炭素削減発言のように、その根拠はいたって曖昧であり、誰が聞いてもいつもながらの思いつき発言とあると受け止められているのが現実です。また某企業が全国に太陽光発電所を設置する計画を打ち出しており、所によっては自治体もその計画に同調する動きがあるようですが、これでは、一体国は何をしているのか、政治家は何をしているのか、と言うような国民の政治不信が今まで以上に増幅するのではないでしょうか。
何故ならば現時点において、政府が、わが国のエネルギー行政がどのように改善されるのかが一向に見えないからであります。これでは国の政策でも政治決断でもなく、企業がエネルギー事業に新規参入するという、利益を優先した商業ベースの話しではないでしょうか。勿論私どもは、この企業が自然エネルギーを利用した発電事業に参入することに異を唱えるものではなく、自然エネルギーによる電力の安定供給を願うものでありますが、私どもが要望するのは、国が、政府が、自治体が、この度の原発事故を教訓にして、従来のエネルギー行政を真剣に見直し、次世代を見据えた新たなエネルギー行政を明確にしなければならないということであり、そのための国民の協力には国の補助金制度も組み入れるべきであるということです。貴職にはぜひこのことも念頭において今後のエネルギー発電について検討して頂きたい。


一、次に、再生可能な自然エネルギー発電については、今後の住宅及び工場、そして全ての公共施設、スポーツ用グランド等などの大型建造物を建設する場合は、太陽光発電システム若しくは風力発電装置を設置することを建築基準法に義務付けることを法制化するとともに、これらの設備のない既存家屋や零細企業の町工場などには、政府が率先して補助金を拠出するようにして頂きたい。

一、バイオマス発電については、各自治体でも取り組むことのできるものであり、街の美化対策にも有効であることから、各自治体は率先して取り組んで頂きたい。

一、風力発電は低周波や騒音等の問題、そして景観を損なうといった問題があるが、これは設置場所を内陸に定めず、海上を利用すれば解決できることであり、ぜひそのために技術開発を進めて頂きたい。

一、上記の再生可能な自然エネルギー発電を活用することによって、優しい豊かな自然環境を回復することが可能になるばかりでなく、科学の進歩とともに、自然の摂理とを喪失してきた現代人に、自然からいかに人間に素晴らしい恩恵を与えてくれるのかと言うことを自覚させるためにも自然エネルギーを利用した発電所建設を実現して頂きたい。

一、以上の事柄を実現するためには、国(政治)と行政が一体となって取り組むという決断が不可欠です。従いまして全国の自治体が一丸となって掛かる問題を政治に反映させることをここに要望致します。

 尚、甚だ勝手ではありますが、私どもが要望する無限な資源を利用する再生可能な自然エネルギー発電所建設について、貴職は如何様に取り組まれているのか、今後如何様に取り組まれるのかについてのお考えをご回答頂ければ幸甚でございます。