全国民の総意と総力で領土を守れ

平成25年5月3日

 日本の主権が脅かされている。安全保障、自衛権が揺らぎ、固有の領土の保全さえ、ままならず、近隣諸国は平然と我が国の領土を欲しいままにしつつある。

 今、我が国が自分の国は自分で守るという気概を持ち、国民の総意を持って起ち上がらなければ、必ず後世に悔いを残す事になるであろう。




中国の異様な軍拡路線と尖閣諸島への攻勢


 習近平が中国共産党の最高指導者として就任し、軍・党・政府の権力を掌握し、習近平新政権が発足した。すでに中国人民解放軍を指揮する総参謀部は全軍に対し、今年の方針として「戦争の準備をせよ」と指示を下した。中国々内では「尖閣戦争」を想定した番組を連日のように放送しているという。この臨戦体制のような中国の状況は、中国新指導部による「内憂を外患に転化」する、苦肉の策とも言えるのである。中国々内の治安情況は悪化の一途をたどっており、沿岸部と内陸部は極端な格差の拡大が起こり、一日に四百件から五百件の暴動が発生している。この鎮圧に金がかかり、国家予算から見てもここ数年、軍事予算を上回る治安予算が使われている。前々から我々が指摘している少数民族に対する治安対策も加わり、中国新指導部の前途は多難と言わざるを得ない。

 中国は全国人民大会で、国家海洋局の中に海洋での警察権を行使する部門を統合した「中国海警局」を創設し、習近平国家主席の指導の下、「海洋強国化」を推進する態勢を固めた。海警局は人民解放軍とは別の、行政組織直属の艦隊というべきもので、公安省の次官が初代局長に就任した。この動きは日本・ベトナム・フィリピンなどに対して勝手に作った領海法に基づき警察権を行使する体制を整えたということになる。

 これによって我が国に対する侵略活動が活発になり、領海侵犯が中国の警備、警察活動として正当化される法的根拠を得た事になる。ここで予測される事態は海警局による法執行である。公船が警察権を持つことは、今後、日本の漁船が拿捕され漁民が逮捕される事態が発生する事を意味している。我が国は北方領土海域でロシアに拿捕された日本の漁船、漁民に対して為す術もなく、漁民は泣き寝入りするしかない。竹島周辺でも韓国の不法行為に対して何ら対応出来ずに日本国民が犠牲になっている。尖閣諸島でも同様なことが起こる可能性が高い。すでに西沙諸島ではベトナム漁船が砲撃され大破した。中国海警局は3000隻の船艇を保有し、南シナ海、東シナ海を制覇し、習近平の「海洋強国」を支えているのだ。中国の海警局を前面に押し出した攻勢に対し、日本の対応策はあるのか、海上保安庁は巡視船12隻で警備体制を固める方針だが、果たして守り切れるのか。



我が国の防衛体制の問題点

 尖閣防衛について日本は、日米安全保障条約第五条により、アメリカの軍事出動によって守られると考えている。アメリカは何度も尖閣諸島は日本の領土であると確認し、その防衛は日米安保の下に保障されるとしている。しかしもう一方では日中の領土紛争には介入しないと明言している。中国はアメリカのこの矛盾点を巧みに衝いてきたのである。

 軍による侵攻ならば米軍は出動せざるを得ないであろう。その場合でも日本の自衛隊による防衛軍事行動が前提になる。自衛隊が闘わないで、米軍の出動はあり得ない。中国は日本の自衛隊が現行憲法によって交戦権が無く、攻撃力が無い事を熟知している。それ故、米軍の出動が無ければ容易に尖閣を奪う事が出来るのである。しかし今回の警備局による侵攻は、漁船と共に尖閣上陸となった場合、海上保安庁の対応ではとても間に合わない。海警局の3000の艦船に対して巡視船12隻で何が出来るというのか。中国の米軍封じ込めと用意周到な海洋強国戦略に対応する我が国の海洋戦略を対置しなければならない。特に海上自衛隊による海保支援が出来る法整備が早急に求められている。又憲法改正による防衛体制の構築が同時に進まなければ本格的な防衛は不可能であろう。

 そもそも中国の「領土観」は「一度中華文明の名の下に獲得した領土は永久に中国のものでなければならず、失われた場合には機会を見つけて必ず回復しなければならない。中国の領土が合法的に割譲されたとしても、それは中国の一時的弱さを認めただけである」それ故、中国の教科書では、領土が歴史的に最大であった19世紀の領土が本来の中国として描かれている。

 「日本は中国を侵略し、琉球を奪った」と今日でも平然と主張しているのはその為である。尖閣防衛を行う日本が参考にすべき事例がフィリピンと中国が領有権を争ったミスチーフ礁を巡る攻防にある。米国とフィリピンは米比相互防衛条約を結び、時のベーカー米国務長官は「米国はフィリピンとの防衛条約を忠実に履行し、フィリピンが外国軍隊の攻撃を受けた場合、米国は黙認しない」と述べており、中国は手を出す事が出来なかった。

 搶ャ平は尖閣諸島に対し、日本に提案したように、マルコス会談(1974)アキノ会談(1988)に於いて問題の棚上げを主張したのである。これは中国が平和裡に問題を解決したい意志ではなく、軍事バランスが中国に有利でないと判断しただけの事にすぎない。棚上げによって相手の動きを封じ込めればそれで充分目的は達成出来たのである。その間中国は毎年15パーセントの軍事拡大路線に邁進したのである。1991年9月、フィリピン上院は米比基 基地協定の批准を否定し、1992年11月、米軍はフィリピンから撤退した。旧式駆逐艦1隻を有するフィリピン海軍は中国海軍の敵とはなり得なかった。

 フィリピンのマゼダ国防委員長は「フィリピン海軍としては軍事力による防衛は不可能で戦わずに撤退せざるを得ない」と発言している。中国は米軍の介入がないと判断し、堂々となた上げを撤回し、1995年にミスチーフ礁を占領した。中国にとっては「湿地恢復」に成功したのである。

 搶ャ平は1978年に「尖閣問題の棚上げ論」を唱え、軍事バランスの不利を克服しようとした。

 日本国民が「日中友好」に浮かれ、尖閣諸島の領有を主張する事は「日中友好」に棹さすものだとされていた。その中で我々日本青年社が灯台を建設し、尖閣諸島の実効支配を行なってきた事は、先見性のある先駆的行動であった。日本政府は搶ャ平の棚上げ論に惑わされ、歴代政府の見解は「迷惑行為」とし、灯台の存在そのものを無視し続けたのであった。今ようやく多くの識者にその行動の正しさが認識され、見直されつつあるが、まだまだ不十分であり、尖閣問題の真実を更に全国民の共通のものに拡げなくてはならない。日本がフィリピンと同じ道を歩むかどうか、それは国民の意識の問題でもある。

 前民主党政権が沖縄米軍基地の撤去を言い、日米離反の方向に向かったとたん、中国の尖閣棚上げ論がどこかに行き、日本への攻勢を強めてきた。中国の棚上げ論は時間稼ぎであり、不利な状況を有利にする戦略である事を認識しなければならない。尖閣問題は我が国の領土問題であるばかりではない。中国の「海洋強国」を阻止する、アジア諸国の平和を守る問題でもあるのだ。



北方領土返還・早期実現を

 ソ連は昭和20年8月8日、日ソ中立条約を破って日本に宣戦布告し、ソ連軍は日本がポツダム宣言を受諾した8月15日の後に北方領土三島へ上陸し、戦艦ミズリー号に於ける日本の降伏調印式(9月2日)が終わった後に歯舞群島を攻め、9月5日に四島全てを占領して、そのまま返さない。日本の魚加工技術を吸収するため、4年も技術者を帰さない。日本にとってソ連は戦争が終わってからも憎しみの対象であった。しかしソ連は工業が停滞して困っていたので、二島を返還し平和条約を結ぶ提案をしてきた。日本政府はこの話に乗ろうとしたが、米ソの対立が激化しており、アメリカ政府は技術大国日本がソ連と密接になる事に反対だったので、日本政府に対して、四島返還を指示した。ソ連に対する怒りと憎しみが消えない日本人は、ソ連と敵対すべしというアメリカの要求にやすやすと乗ってしまった。勿論、右翼民族派もその先頭に起ち「四島一括返還」をリードしてきた。

 ところが、今や米ソ対立の時代は終わり、ソ連が崩壊し、共産主義の旗頭は中国に替わった。アメリカも日ロ経済が一体となって、中国、北朝鮮に対抗する政治、経済勢力になる事を望むようになった。ロシアにとってもアジア諸国との経済関係を深め、資源エネルギーの輸出と日本の高い技術力の導入により高度な産業構造を作りたいと思うようになった。 日本との関係を改善するには北方領土を抜きししてはあり得ない事は明白である。日本青年社はこのような状況を確認し、返還交渉の行き詰まりを突破する行動に出たのである。4年前の3月であった。日本青年社の訪ロについてはここでは省略するが、国内世論が大きく変化してきた。それまで「一括返還」以外の主張は無視されるか、袋叩きにされていたが、発言権を得てきたのだ。

 その変化の原因は70年近い実効支配を続け、不動に見えるロシアの四島支配に対し、占領された領土を交渉によって返還される可能性が期待されたからである。交渉である以上片方だけの主張が通ることはないが、双方の歩み寄りによって合意することは可能なのだ。ロシアのプーチン大統領はこのことを「引き分け」と表現したのである。森元首相とプーチン氏の会談でどこまで進展したか定かではないが、前進している事は間違いないだろう。しかし注意すべきは中国の動きだ。新指導者習近平は国家主席就任後初の外遊先としてロシアを選んだのだ。プーチン氏も旧ソ連圏を除くと初訪問は北京だった。両首脳が両国の親密性を世界いアピールしようとした行動であった。この中で習近平は明らかに日本を意識した発言をし、第二次世界大戦に於ける戦勝国としての立場を共通認識としての立場を持ち出している。つまり北方領土と尖閣諸島問題で共闘を求めたのである。

 この動きは非常に危険な動きであり、我が国から有効な反論が求められる。ここで明らかになった事は、日ロの友好関係は中国を揺さぶるという事であり、北方領土の返還の早期実現こそ、尖閣諸島防衛の方針になり得るのである。