世界的な危機を突破する道は「自然と共生・環境と調和」だ
平成20年8月19日


 人類は二十一世紀を迎え、恐らく過去経験のした事のない危機の時代に突入しつつある。地球という有限な世界に対し、現代社会は限界を考えない発展を求め、全てが臨界点を突破しつつある。本来、文明、科学の進化は人類に豊かさと平和をもたらすものであった。しかし利益を求め、調和を欠いた世界経済は人類を破滅の道へ導く以外為す術を持たず、戦争と飢餓の世界を創り出そうとしてる。しかしこの深刻な事態を理解出来ずに飽食に明け暮れ、自然を破壊し、永遠の平和を信じている人々が存在することも現実である。もはや一刻の猶予もない、我々日本青年社が新世紀を迎える中で掲げたスローガンである「自然と共生・環境と調和」を高々と掲げ、全世界に向け警鐘を打ち鳴らさなくてはならない。


●国際社会で最大の課題は食糧

 六月三日、ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部に於いて、世界的な食糧価格の高騰問題について議論する「食糧サミット」が開幕した。小麦・トウモロコシ・米などの主食穀物が投機対象として浮上し投機資金が農業市場へ流入したのが異常な高騰の原因と言われているが、生産量が消費量に届かず、絶対的食糧不足が始まった事が重大な要因であることは明白である。我が日本の福田首相は初日の演説で、投機による行き過ぎた価格上昇を監視する国際的制度の創設、稲わらのような食糧以外の原料を使う「第二世代」のバイオ燃料の研究開発、生産国による輸出規制の自粛、世界各国が農業生産を強化することが重要と訴えた。

 また具体的対象として、発展途上国が食糧生産できるように、種子、肥料など五千万ドルの追加支援も正式に表明した。日本が国際社会に対しリーダーとして登場する宣言として非常に有効であった。

 なぜならば五月末に横浜で開かれたアフリカ開発会議(TICAD4)でも日本のイニシアチブが認められ、中国に片寄っていたアフリカの資源独占が弱められ、対等な位置をしめる事が出来たからだ。

 新聞報道でみるだけでも世界の食糧不足は深刻である。昨年私たちが「青年戦士」で警告し、予測した事態が次々と起きており、アフリカ、中南米、アジアで最貧層の人々は食糧が手に入らなくなり政情不安が続いている。今年に入ってから食糧の輸出規制を多くの国々で開始した。ロシア・中国は輸出税を課し、ベトナム・インドネシアはコメの輸出を禁止した。アフリカでは食糧を求めた暴動が多発し、政権の交替は日常茶飯事となっている。食糧は自然が人間に与える恵みである。自然を破壊し続ける現代社会に自然が牙をむいたと考えるべきであろう。


●人口爆発に口を閉ざすのは何故か

 環境問題が現在これだけ重要な問題になってきた最大の原因は、人類の爆発的人口増にある。二十世紀初頭に世界人口は十五億人であった。それが二十一世紀初頭には六十億人を越えてしまった。たった百年間で四倍をこえてしまった人口増は、爆発的としか言いようがない。更に追い打ちをかけるように人々の食生活が変わっている。世界中に肉食が拡がり穀物の直接消費から、牛や豚を通しての消費に変わり、十倍のロスを生み出した。人間の豊かさの追求と快適さの追求は限界がない。人々は冷暖房の利いた家に住み、エネルギーを際限なく使い続けている。有限と無限の区別のつかなくなった現代社会は明らかに滅亡に向かって突き進んでいるのである。

 私たちは今、本当の危機を迎えつつあるのだ。真実を勇気を持って明らかにすることなしに、この危機を克服することは出来ない。


●保守・民族派の思想が世界を救う

 「自然と共生」することの重要性を本当に人々は理解しているのであろうか。日本民族は歴史の中で自然にその生き方を学んできた。日本の宗教は西欧諸国や中東諸国と全く違うものとして発展した。神社は鎮守の森に埋もれて存在し、自然に囲まれた社こそ神が宿る場所である。それに対しチャペルやモスクは、遥か彼方から見えるように光輝き、その存在を威圧的に示している。仏教に於いても日本に伝わる事によって自然と共生する宗教に変わった。東南アジアの寺院と日本の寺院と比較すれば一目瞭然である。神道という日本特有の文化は日本そのものを表している。その特徴は自然と一体となり、自然をあるがままに受け止め畏敬し、感謝し、自然に溶け込んでゆく考え方である。西洋の神は自然を破壊し、森を切り拓いて存在したが、日本の神は森の中に存在し自然と共に生きている。日本人は生まれながらにして自然と共生して生きてゆくことを身につけているのである。この素晴らしい日本の文化こそが行き場を失った現代社会、二十一世紀の世界的危機を救う、唯一の道である事を誰も語ろうとしていない。なぜならば我々日本人自身が、日本の素晴らしさを忘れ去り、日本精神を失ってしまっているからである。もう一歩踏み込んで言うならば、東京裁判の呪縛から開放され、日本精神を回復した、我々保守民族派以外にこの世界的危機を救う事はできないのだ。


●我が国に課せられた問題は何か

 日本が環境問題、食糧問題に対し何を為すべきか。先ず本来の農業国としての地位を回復しなくてはならない。自給率四十%を切るという情けない状況は一刻も早く克服しなければならない。食料輸入大国の日本が世界各国に対し、輸出規制の徹廃をいくら叫んでも効果は無いであろう。日本は現在為し得る最大の努力を農業に対し行なわなくてはならないだろう。その為には戦後の農政の見直しが絶対条件だ。

 マッカーサー・GHQによる日本改造は日本の農業の解体から始まった。敗戦による食糧不足に対し、米国の余剰農産物の消費地として日本は最適であった。GHQは日本の農業の再生、再建を防ぐための農地の細分化を断行した。一つは小作農民に農地解放し、大型農業・農業経営を不能にした。更に遺産相続の法律を変え、農地は細分化され、農民は農業を捨て、都市に逃げ出すことになった。

 アメリカの目的は日本の力を根底的に破壊する事にあった。日本は近代化が進んでいるとはいえ国民の六割は農民であり、農業を支えている制度としての家族、つまり家父長制は絶対不可欠なものであった。日本弱体化政策の最も効果的なものとして家父長制の崩壊があり、職業としての農業は壊滅した。農業大国アメリカは日本に対し食糧の輸出攻勢を行い、ついに肉を中心とする、西欧型食生活に日本人を変え、現在に至っているのだ。日本の伝統的主食である米飯食は半減し、内職的米作りは政府の保護政策により、国際価格の十倍もの値が付けられ、国民を苦しめている。

 このように戦後日本の生活様式は様変わりし、農業のスタイルも全く変ってしまっている。特に日本の農業は自然と共生する事を忘れ、環境を破壊し続けている。世界中の農薬の八割をこの狭い国土で消費しているという日本の農業の現実を私たちは知らなければならない。少なくとも作物を作らなければ、政府が金を与えるという「減反政策」は直ちに廃止し、休耕地を無くさなくてはならない。そして何よりも重要なことは、日本人が、日本人として復活し、「自然と共生・環境と調和」という生き方を回復することである。

 恵まれた日本の風土の中で「もったいない」という思想を体現できるのは日本人だけである。そしてこの日本人の生き方が世界をリードし、世界を変える以外に地球の未来はないのである。私たちの気の遠くなるような重大な任務を、まず自らの足もとから固めてゆかなくてはならない。