平成16年2月2日
総合管区長 貞方美津夫


  最近、新聞紙上で東海・東南海地震が近々来るような記事が多く出ている。

  元来、天異地変は予期する事が極めて困難で、とりわけ大地震ともな

ると北京大地震を除いて、予測が的中されたことがない。そうした中で、今マスコミを騒がせている紀伊半島から駿河湾を軸とした地震ははたして来るのだろうか。仄聞するところによると、東海地震について、静岡県はほぼ万全な体制を築き上げているとのことである。しかし、他の地域は、そのような準備がなされているとは聞いていない。

 万全な体制を築いても、マグニチュード8クラスの地震が来れば、その被害は甚大だ。いわんや、何の体制も築いていないことは何をかである。行政は静岡県にならって、迅速な体制を築いてもらいたいものだ。

  そもそも日本列島は地震天国であり、安全な場所などないと言ってよいほどである。たとえて言えば、阪神・淡路大震災が来るまで、当該地域に住んでいる人は、日本の中では極めて安全な地域に住んでいると考えていたのである。だから、東海・東南海地震が今浮上しているからといって、どこが安全かといわれても、答えるすべがないのが現実である。

 寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやって来る」と言っている。日本列島に住むわれわれはこの言葉を教訓として日夜臨まなければならないのが宿命なのだ。 私は震度5強の地震を1日に2度経験したことがある。この程度の地震ですら立っているのは困難で、何かにすがっているか机にもぐっている以外、方途がないのである。だからこそ、震度7を超すような大地震が来れば、私たちの生と死は"運"に実は任せるほかないのだが、だからといって、おめおめと何の対策もとらないでは、何のための日本列島人なのかと私は問いたい。ほんとうに日本列島は地(天)獄なのだ。


 典型的な例としては、東海地方を襲った安政の大地震がある。これはマグニチュード8.4の地震が2日続けて濃尾平野を襲ったのだ。

  現在、とかくイラク、北朝鮮問題など軍事的な側面に安全を求める傾向があるが、元来、軍事と天異地変は位相が違うのである。そこをしっかりと区分けし、地震天国日本についての全国的な対策が今政府に緊急に求められていると言わなげればならない。このことについて手抜きすることは、国民の安全保障を最もあなどっていることになるのだ。気象庁の大いなる警告をなぜ政府、自民党や野党は取り上げないのか。これは極めて不思議なことだ。狸や熊が遊ぶ道路を建設することだけを考えて、人間に対しては、こんなことは何の金にもならないからと、素通りしてしまうのだ。そんな国会議員を選んだ国民もまた国民であるといわねばならない。

 私たちは今、気象庁から警告を受けているのだ。確かに、新聞は警告を発しているが、前にも述べたように、政治の場でこのような問題が議論されたとは聞いていない。それが国民の命を預かる最高府たる国会の姿なのか。疑問に感じてしまうのは私だけの小さなつぶやきなのだろうか。私は絶対にそうは思わない。国民の安全を守ってこそ、行政は存在する。また、立法もそうである。こうしたことを怠る日本政府に怒りをぶつけようではないか。