現代日本社会に対する一考察

平成15年7月31日
編集委員会

 有事立法、自衛隊のイラク派遣が国会で議決されて決定した。

 この決定には賛否両論が叫ばれているが、これは日本が「普通の国」に向かっていることであり一応の評価に値するのではないか。一方、これまで考えられなかった少年犯罪を含め日本社会の治安問題である。

 この日本の現在をどう考察するのか、これは極めて重大だ。有事立法、イラクヘの自衛隊派遣の決定に私たちは今日の日本社会の有り様を見ることがでる。この法案そのものは良しとして、この決定の過程に疑問があるからだ。

 私たちは現在の存在を「違憲自衛隊」と規定し自衛隊については「憲法改正」を常に視野に入れてきた。つまり、「自分の国は自分で守る」ことを基本にし、なし崩し的に憲法を都合良く解釈することに反対してきた。このことはいい換えれば資本制社会の根幹である利益追求社会にのみに軸足をおき、明治以降の協同・共同社会を否定することに対する警鐘でもあった。しかし、日本社会の世界に希に見る利益社会を追求し、協同・共同社会を外野席に放り込む荒技で戦後50年を費やしてきた。

 今回の有事立法、自衛験のイラク派遣についても日本国の基礎の「憲法」は外野席どころか場外に放り出され「事の本質」を逸脱して決定した。こうしたマックスウェバーのいうゲゼルシャフト社会(利益社会)一辺倒の論理で決定がなされたことはバブル崩壊後も日本精神が何一つ変わらない典型的見解として私たちは見る。

 それもそうだ、若者の自衛隊員の内、「国を守る」意志で入隊したのではなく、「就職」した者が圧倒的だ、といういびつな自衛隊=軍隊が存在しているからだ。こうした非論理的帰結は若者を直撃する。協同・共同社会の創造はカヤの外に置かれ、個人主義ではなく、利己主義がはびこることとなる。

 少年犯罪の現在的特異性はこの日本社会の病巣に事の本質があるとともにこうしたゲゼルシャフト社会ではなくゲマインシャフト社会(協同・共同社会)をつくるための鋭意努力するのが右翼民族派の大きな存在であることを自覚し、戦後社会をしっかりと精算・総括すべきなのだ。その一つの方向性(べクトル)として、「健康」の氾濫を揚棄すべきなのだ。健康から健全な思想が生まれることを神話化しなくてはならない。健康ということばにはこの世界を見る眼の「頽廃」が潜んでいるからだ。具体的例として明治以降の文学者で現在も耐えている作家の殆どは「健康」とは無縁だ。

 肉体的健康と思想的健康を見誤るととんでもないことになる一例だ。だから若者は肉体と頭の訓練で両者の健康を努めることが大切なのだ。とはいえ社会投影(感受性、感性)を若者は現存する社会を一番鋭敏に反応する。つまり重要が諸問題で事の本質を抜き去り一対一の対応を社会性を持ったこの社会が行なうなら、若者はベクトルを失い瞬時の現実的対応を図ることになる。

 こんな現存社会は一刻も早く克服することを私たちは訴える。

 就中、学力の格差は広がり、数学では中国、韓国に大きく水をあけられていることは緊急に対応すべきだ。 この学力格差が先端産業である「液晶」「半導体」で中国・韓国に超えられている実態は「技術立国」日本を危ういものとしている。いい換えれば、犯罪の異常性と学力低下は表裏一体化をなしているのだ。だから石原都知事が公立高校の学力向上に力を入れていることは若者の日本的犯罪を今止めなければならないからなのだ。小泉首相の構造改革がゲゼルシャフトに終わりゲマインシャフトに手をつけないからとして成果が挙がらないのもこうみれば当然のことなのだ。

 今こそ「日本社会の構造改革」をと私たちは訴える。