平成15年04月28日


アメリカの世界一国支配に疑問!

 三月二十日に開始された米英vsイラク戦争は、米英連合軍の圧倒的な軍事力により短期終結に向かっている。当初から制空権も持たず、長距離ミサイルも持っていないサダム・フセインは闘える筈もなかった。

 唯一の望みは、世界各国に於ける反戦・反米運動の高まりと砂嵐であった。

 そのどちらも数日で消えてしまい、いらくは無政府状態に陥り、フセインの生死についてはさだかではないが、二十数年に及んだ「独裁の共和国」は崩壊した。

 世界平和を考える時、今回のイラク戦争をどう捉えればよいのか、真剣に考えなければなるまい。特に隣国に北朝鮮を持つ日本としては、現実的な課題とならざるを得ないのだ。


■国連の世界各国の安全保障は米英の前に敗北した

 日本国民の多くは世界平和=自国の平和は国連が保証してくれると思っている。しかし今回の米英vsイラク戦争はその考えを打ち砕くのに十分な教訓を与えた。

 国連安保理の意志が統一できない時は国連は何一つ策もないという致命的欠陥を露呈した。米英と仏独露が最後まで対立し、フランスが拒否椎の行使を言及すると米英は自らだけで開戦した。結局、世界は追認する以外に道は残されていなかった。

 国連は大東亜戦争に対する対日軍事連合を基礎として生まれた。それ故、敵は日本であり日本を軸とした「枢軸国」を敵国条項に入れ現在でも安全保障常任理事国として拒否権を持ち決議に対し国連が有効な対応をしたことは無いに等しいのだ。にもかかわらず戦後日本の外交路線は「国連中心主義」で行われてきた。日本の安全保障は米国との安全同盟と国連加盟によって行われている。日本の国連分担金は米国の22%に次いで19、5%という高い数字であり、実質的に国連は日米両国によって支えられているといえる。しかしリーダーとしての米国の発言力は認められてはいるものの、日本は常にカヤの外に置かれ、常任理事国にすらなれないでいる。このような国連に対し冷静な判断が必要であり、我が国の安全保障を「国連万能主義」にまかすことはできない。

 米英によるイラク攻撃は独立国家に対する一方的な攻撃であり湾岸戦争の時のような侵略に対する一方的な反撃ではなく、自衛権の拡大解釈という性格のものであり、米・英によるイラク侵略戦争が客観的真実であろう。しかし米英に対して独仏のように反対を唱えても結局米英のイラク攻撃を阻止することはできなかった。加えて米国に対する国連のよるペナルティーは不可能なのだ。

 国際社会はあくまでパワーポリティクスの世界なのだ、という認識を持たなければ国を誤ることになる。特に日本は北朝鮮問題等を抱え、安全保障を米国に依存している。「普通の国」にすらなることもできないでいる日本が米国に対して軍事力の行使の中止を迫ることは出来る訳がない。日本政府が今回行った対応は仕方がないといえないこともあるが、別の選択肢があったと想定できる。日本が米国に対し物が言える様になるためには米国への依存度を下げ、少なくとも集団的自衛権の行使が行える程度のことができなければ口舌の徒として世界の笑い者になるのがオチだ。


■イラク国民の救済こそ急務だ 

戦争が始まった以上、出来るだけ早期終結を求める以外に道はない。戦争はいかなる戦争も壮大な浪費を行う。自然破壊や貧困を招く、イラクの復興は長い時間と膨大な費用がかかるであろう。早急な人道支援が求められる。日本政府もコメ支援をはじめ多角的支援を開始した。日本青年社はアフガン支援の教訓を生かし、戦争開始と同時に救援活動を開始した。日本人一人一人の心がイラク国民に届く救援活動を目指し国際部を中心に活動している。日本青年社の隊員はできるだけ多くの人々に呼びかけて救援物資の提供を受け、直接現地に届ける活動に取り組んでいる。


■二十一世紀を平和な世紀とするために。

 二十世紀は戦争の世紀だった。世界中の人々が戦争に巻き込まれた世界大戦も二度にわたって起こった。世界の人々は第二次世界大戦の後、国際連合をつくり、戦争を未然に防ごうとした。しかしこの国連には政治的欠陥があった。戦勝国を常任理事国として固定させ拒否権を与えたことである。国連は常任理事国の意志に左右され、常任理事国間の対立が起こると拒否権の乱発が行われ国連は機能しなくなって行った。米・ソの対立による冷戦時代はまさにこの時代であった。しかしソ連が崩壊することにより世界は一元化へ向かって進むかに見え、平和な時代の到来かと思ったが、民族対立・宗教対立が激化し紛争が多発した。特に中東・アフリカ・バルカン半島では毎年のように戦乱が続いている。戦争は必ず自然破壊・貧困・餓えを生み出すことは戦争の歴史が証明している。しかしアメリカの考えはこうだ。「世界をアメリカにとって安全にするのではなく、世界をよりよいものにするんだ。民主主義を広めるために努力する」これはアメリカが超大国、超軍事大国として世界に君臨してはじめて言えることであり、今回はそれを実証したとも言える。日本はアメリカとの軍事同盟を持つ国であり、国連を実質的に支えている国である。

 ただ情けないことに自国の防衛体制を持てない国でもある。自国の平和と世界の平和を求めるならば、せめて「普通の国」になり、世界の一員として「いうべきことはいう」国にならなくてはなるまい。国連は自然環境の問題や健康問題などに対しては有効な機能を果たしている。また国際的な話し合いの場としては唯一の存在であることも事実だ。国連重視はいいとしても、自国の平和と安全を国連にだけ求めるような日本の政治は国を守ることにはならない。

 世界の新秩序は国連中心から国家と国家の結合と離反に移行する事を軸として形成されてゆく可能性が秘められ、同時に先に書いた通り、ネオコン(新保守主義)=ブッシュの世界支配の方向性がより鮮明になるだろう。だがアメリカも内部矛盾を抱えており、「ローマは一日にしてならず」の諺通り、アメリカの世界一国支配が長続きするかどうかは不透明だ。加えてEUvs米英という対立軸はEU内部の分裂をはらんでいる。米英vsイラク戦開戦を巡っての対立はこれらのことの端緒といっても過言でないと我々は世界の新秩序の流れを見極める国益と世界平和への道を求めなくてはならない。