平成14年04月13日
編集委員会


(1)

  米国はこの間、イスラエルのシャロン首相によるパレスチナ・イスラム教徒が住む地域への軍事攻撃を支持してきた。だが、世界各国、就中EUのイスラエルヘの批判が強く、やっと重い腰をあげ、調停工作のためイスラエル・パレスチナにパウエル国務長官を派遣した。
 パウエル国務長官はシャロン・イスラエル首相に対し軍事攻撃を止めることを説得し、PLOアラファト議長にも会い、和平調停の第一歩とするとしている。
 だが、この工作は米国のギマン的態度の表明に過ぎない、と私たちは考える。
 第一に、クリントン前大統領の和平交渉をブッシュ大統領は否定し、積極的にイスラエルを支持してきたこと。この反省・否定抜きに和平交渉が進むとは考えられない。ただEUの米国批判を交わすためとしか考えられない。
 第二にPLOアラファト議長とも会見するとしているが、イスラエルに対し「監禁」から解放することを要求していない。
 れらのことからやむを得ない、つまり消極的和平交渉であり、こんな姿勢では逆に紛争を激化する役割を果たす結果となりかねない、と私たちは危惧する。

(2)
  私たちが米国を信頼できないのは、テロ撲減と称して戦争で事を処理しようとしていることだ。加えて米国の軍事攻撃は正義であり、米国に意義を申し立てることは悪であると決め込んでいる。
 このことは米国の軍拡は正義で、他は悪だ、ということだ。日本が世界第4位の軍事的装備を保持していることも、米国の利にかなうと考えているからであり、同時に米国の軍需産業に貢献しているからだ、と思う他ない。
 私たちは米国内の共和党、民主党のどちらを支持する立場にない。ただ、現在のブッシュ大統領が「世界は米国のもの」と勘違いしているのではないか、と思えて仕方がない。例えば「京都議定書」離脱、「ABM条約」脱退、「臨界前核実験」など、世界の平和や、自然と環境を守り、共生する精神が見られないからからだ。
 どうしても「好戦的」としか見えないのだ。
(3)
  グローバル化社会についても米国中心で、「南北格差」については何ら触れず、日本、中国が貿易赤字の最大国のため、敵視する政策を採っている。ただ強ければ良いというものではない。しなやかな「力」を持つことも大切だ。例えば、米国クライスラーは独国ベンツと合併したが、すでにクライスラーの力は全くない。仏国ルノー社と提携した日産自動車は見事に再生した。
 これらの例はグローバル化社会とは米国のためにあるのではなく、世界各国の利益に合致するためにあることを忘れてはいけない。
 このためにも「南北格差」「地域格差」解決のため、先進各国が鋭意努力することが大切なのだ。
 具体的に日本を見れば、アジアで経済先進国は日本とシンガポールだけである。日本が採る道はアジアの発展に貢献することがグローバル化社会での任務であり、その方向性(ペクトル)を持って政治的・経済的任務を果たすことが大切なのはいうまでもないことだ。
 幸いなことに、ASEAN、APECがすでに存在している。特にASEANについてはより発展させ、北東アジア、オーストラリアの参加が検討される時期にきていることを十分認識し、アジアの政治的・経済的交流を加速させることが喫緊の課題である。
 そのためにも北朝鮮が「日本人拉致」問題についての解明に積極的な姿勢を採り、解放経済の道を歩み北東アジアの一員として積極的に参加することを期待したい。