平成14年02月22日
編集委員会


ブッシュ大統領

江沢民主席

金大中大統領

小泉首相

(1)
 
ブッシュ米大統領は2月18日〜23日までの6日間、標題の三カ国を歴訪し帰途した。

 この三カ国での成果は、先の米国多発テロ時のブッシュ・江沢民会談と比較した時に果たして際立った成果をあげたのか、と問えば率直にいって「NO」といわざるを得ない。

  なぜそのような結果になったかといえば、世界のリーダーを自負する米国が、資本主義世界、地球人類の発展から物事を出発するのではなく「米国の国益」を余りにも優先した発言が多すぎたからだ、といわざるを得まい。

 例えば、米国はイラク攻撃について日本の支援と中国の了解をとりつけようとした。日本は日米同盟の制約もあって一応「了」としたものの、米国の攻撃で焦土化したアフガニスタンの復興のイニシアチブを背負っていること、あるいは米国がテロ国家として名指しし攻撃の対象としたイラク、イラン、北朝鮮の内、イランとは長い歴史を持つ友好国であり、北朝鮮は隣国であることから、米国のような単純な「攻撃」論を受け入れられないことから、日米首脳会談ではイランについては公式的には触れず、北朝鮮問題について日米韓が緊密な連携を計るとの常識的な所で会談は決着した。


(2)
  同時に、米国大統領の訪韓では金大中韓国大統領の「太陽政策」を支持しつつも「力の均衡」で韓国の平和が維持されているとの従来の見解を述べるに止まった。かてて加えて、中国江沢民主席との会談では北朝鮮とのパイプの役割については合意したものの、政治諸問題(台湾・イラク問題etc)では対立、平衡線に終始する結果が発表された。

 いいかえれば、仏首相がすでに発表したように米国のイラク攻撃に対しEUは反対であるというとの認識から見ても、世界各国にそれぞれの事情と国益があり、米国の正義は世界の正義であるとの認識では米国が政治的リーダーの役割を果たすことはできないことを米国大統領の東アジア訪問は皮肉にも世界に発信してしまった、と総括する他ない。

このことは、日本青年社のスローガンである「自然と共生 環境と調和」の肉付けする方向として、日本が採るべき道が、日米同盟の対等な関係と、アジア外交を機軸として世界に臨むことが今問われていることを示したともいえる。それは中国という特異な大国がアジアに存在していることから、国難を極める可能性も否定するものではない。だが、それを乗り越えてこそ日本が世界に独自な歴史、文化、現在性を発信することができるのだ、と考えている時にきているといわざるを得まい。


(3)
  次に日本経済であるが、日米首脳会談で「構造改革」と、日本発「世界恐慌」を阻止し、世界経済に役割を果たすことで完全に一致した。

 そのためには、資本主義社会における銀行役割について関係者がより自覚することと、デフレスパイラルだからといって「政策的インフレ」を引き起こすことを阻止することが不可欠だ。

 特に後者については、1970年代前半の田中総理時代の狂乱物価を想起すれば明らかなことである。加えて、当時の日本は「高度成長」という体力があったから克服することができたが、体力が弱体化した現在の日本資本主義、資本主義世界においてやってはいけないことだ。半年くらいの効果が万一あったとしても、次に待っている恐ろしさを知るべきである。

 つまり、小手先の「改革」で日本経済の再生はないことから、「構造改革」を合唱するのではなく、結果をだすべきである。その意味で3月決算を終えてから「銀行へ公的注入」でなく、いつでも「公的注入」のできる態勢を築いておくことが緊急の課題である。いわんや内閣における柳沢VS竹中など論外であり、小泉総理のリーダーシップを発揮させなければ、何の日米首脳会談だったのか、となってしまう。

 米国、EU、アジア諸国から日本経済が危惧されている。そんなことは一日も早く克服してこそ「日本民族の誇り」であり、日本の国益、ひいては世界の利にかなうものなのだ。