2001年11月22日

 中国、上海で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が21日、閉幕した。会議はAPEC基本価値である「自由・解放・繁栄」に反する米国同時多発テロ事件を非難し、首脳宣言を採択した。

 今回のAPECは経済協力会議としては特異な同時多発テロで世界同時不況が深刻化し、米英のアフガニスタン攻撃がより激しくなる中で開かれた。同時にテロ発生後、米国、日本、中国や、ロシアといった主要国の首脳がはじめてそろった会議でもあった。

 会議は終始米・中首脳の方向つけで進められた。私たち青年社は1つの疑問を感じる。アジアのリーダーとして「テロ撲滅のため今何が喫緊であり、未来に向けて何が必要か」と言う積極的な方針が見られなかったことは、アジアのリーダーとして自負している我々としては物足りないとも言える。
 たとえば、具体的にはイスラム教徒が多いインドネシアメガワティ大統領マレーシアのマハティール首相に積極的に関与し、アジアから見た反テロへの協調の道をさぐるのも今回の会議で日本が果たす役割ではなかったかと考えられる。
 だが、反テロ、世界同時不況克服へ各国が協力する意志統一をかちえたことは成果として見落としてはいけない。

 
APECは1989年1月にオーストラリアのホーク首相が提唱したアジア太平洋地域初の域内各国間の経済協力のための政府間公式協議体。当初の加盟国は日本、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、それにASEAN6ヶ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ)の計十二カ国。その後、中国、台湾、香港、メキシコ、チリ、パプアニューギニア、ベトナム、ペルー、ロシアが加わり、現在の加盟国は21ヶ国・地域。

 NAFTA結成やEC統合等に対応しながら、「開かれた地域協力」を掲げ、人材養成、投資促進、統計整備等の分野で協力を進めていることが会議での基本である。その上にアジア地域での経済発展を展望している。

 だからこそ各国が反テロで一致するのは常識的なことであり、アジア経済の低迷をより深く討論し、貿易の自由化先進国による発展途上国への資本の投資を通して経済格差を解消し、アジアが北アメリカ、EU等と肩を並べるために何が必要か徹底した討論が望まれたのだ。

 だが、米・中・ロ等の大国によるイスラム教問題での深刻化の中で余りにも政治的会議に終始したことは否めない。

 あえて付加するが、APECは台湾、香港が含まれており、政治的な問題を扱わないのが不文律になっていた。そうした点から見れば余りにも政治的な会議に傾斜したといわざるを得ない。

 このためにも反テロ政策で影が薄くなっている日本経済の構造改革を再度鮮明にしつつ、断行する必要がある。この点をふまえないとAPECは本来の課題を失い、米・中・ロの軍事大国に追随する会議に展開しかねない。その中で「上海アコード(合意)」を再確認した意義は大きい。日本はそのことを肝に銘じ、APEC本来の課題に大きく軸足を置くべきである。


上海アコード(要旨)
ビジョンの拡大
 グローバル化とニューエコノミー化による経済の変化を受け、貿易・投資の自由化や円滑化とともに、経済・技術協力に一体的に取り組むという拡大されたAPECビジョン中に、「ボコール目標」を位置づける必要がある。

ボゴール目標への道筋への明確化

(1)目標に向けて具体策である大阪行動指針について、APEC戦略関連分野の実施を通じたニューエコノミーの発展、市場機能の強化などの分野にも対象を拡大。

(2) 準備の出来た参加国・地域が先行して共同の自由化取り決めを実施できることを採用することで一致。

(3) ニューエコノミーのための適切な貿易政策の採用が必要。2年の閣僚会議までに関連分野の目標を策定する。

(4) 貿易円滑化に関するAPEC原則を6年までに実施するため、具体的措置を2年の閣僚会議までに特定する。APEC域内で5年間で取引コストを5%削減することを努力目標とする。

(5) 各国・地域の首脳は2年以降の自由化に向けた個別行動計画について報告する。

実施メカニズム強化

(1) 個別行動計画の審査プロセス強化策を歓迎。5年にボゴール目標に向けた中間段階での現状把握を行う。

(2) 大阪行動指針の更新に賛成し、経済・技術協力活動の向上に向けた見直しを歓迎。

首脳宣言(骨子)

● 世界経済減速の中、米国に対するテロによる消費者、投資家の信頼低下を懸念

● 域内の中長期的な成長には揺るぎない自信。成長の回復、持続のため、マクロ経済政策対話を強化

● グローバル化による経済変化に対応し、その恩恵を共有する決意

● 広範かつ均衡のとれた議題での世界貿易機関(WTO)新ラウンドの早期開始を支持

● 自主性、合意、開かれた地域主義に基づいたAPECの活動への信頼を再確認