上海・世界最高層『森ビル』に50億円

平成14年3月25日

 「森ビル」現地法人が、総事業費750億をかけると言う高層ビルの「地鎮祭」が華々しく行なわれたのが1997年8月。しかし基礎工事だけで4年以上も工事が中断したままだ。


基礎工事だけで4年以上放置

 このビルの経営は「上海環境金融中心有限会司」(上海)という現地法人で「森ビル」の子会社である「フォレスト・オーバーシーズ」を中核とした日本法人「上海環境金融中心投資梶vが90パーセント出資している。

 この「上海環境投資梶vへの出資者は、「フオレスト・オーバーシーズ」の他「住友三井銀行」「東京三菱銀行」などの金融機関を始め、「第一生命」、「三井海上」、そして「大和証券」、や「伊藤忠」、「三井物産」など、わが国の大企業群36社がずらりと顔をそろえている。

 延べ面積335,700平米で地上94階建て、高さは460メートルで世界一となるはずだった。ところが1997年8月27日に着工したが、基礎工事だけで中断してしまった。

 「開工式」にマスコミに配ったペーパーによると「建設地は、上海市浦東新区の中でも、アジアの国際金融・貿易中心区の中心に位置する乙四街区の(中略)、同地域ではすでに多くの超高層ビルが建ち並び、建設が進められ、政府関係機関をはじめ証券取引所、主要銀行、商社などが集積しています。(中略)1994年9月に上海陵家嘴金融貿易区開発股伶有限公司と期間五十年間の土地使用権の取得契約を締結し、1995年末に引受けました。」とある。

 「この高居ビルには、オフィスを中心に、五ッ星高級ホテル、シティクラブ、美術館、店舗、駐車場など構成され、特に最上階にはスカイロビ−や展望デッキが設けられ、種々の設備に最先端の技術を導入し、施工は清水建設の予定で2001年の完成を日指します。総工事費は750億円(土地使用権の取得費を含む)を予定しています。」

 こうして今年はマレーシアのクアラルンプールの「KKCツインタワー」を抜いて世界一の高層ビルが完成する筈だったが、施工を請負う予定だった清水建設も降りてしまい、ただの1階も出来ず、基礎工事だけで放置されている。

 ところが、この高層ビルの経営関係には前記したように日本企業36社の他に、ODAの公金が注ぎ込まれている。

 JBIC(海外協力銀行=当時は海外経済協力基金)は1991年に、「上海環境公司」に50億円の出資を決めた。ただ、現時点では26億7000万円を出資、あとは「追追」出資するという。

「アジア経済危機」が原因?

 この上海の高層ビルが建設される地区は、当時、わずか半年間で倍増するという空前のビルラッシユだった。地元紙によると、着工した1997年6月時点で建設中のビルは147棟。中国全体でみても、この無秩序な建設ラッシュがたたって、ビル空室は1年前に比べて30パーセントも増えていた。

 すでに20数億円を出資していろJBIC(海外協力銀行)の広報では「これはODA開発政策の一環で、主要なプロジェクトとして位置づけられている。それは経済協力性の高いもので、単なる不動産の収益を上げるだけだというものではなく、金融インフラの・・・・・。」ときれいごとを並べているが、そんな主要なプロジェクトが4年以上経っても基礎工事だけというのはどういうことなのか。

 そして今になって森ビル側もJBIC側も「アジア経済危機」をその理由にあげている。

 JBICの広報では 「アジア通貨危機があり、一時中断していますが、もっとグレードアップし、付加価値をつけて建設するといっていますので……」といい、森ビル広報では「あのあとのアジア経済危機というのがあり、予測できなかった。今は、安定を取り戻しているし、上海は何といっても国際的中核都市です。テナントビルの上海の現状は、インテリアも素材も、また防災設備なども甘い。そうしたことから、もっとグレードの高い30年経っても40年経っても機能していけるものにすれば・・・」という。

 そこで「具体的にどこをどうするのか」と質すと「現在アメリカのKPFという設計会社に依頼していまが・・・」。
「設計会社は発注者の要望にそって仕事を進めるもので、森ビル側が具体的に指示しなきゃ進まないでしよう」
「それはまだ分かりません」

 どだい「アジア経済危機」は1997年7月2日、タイ中央銀行が管理フロート制を導入、事実上バーツを切り下げたことから、タイの通貨不安が一気に表面化。その後時間差をもって韓国、インドネシアなど、他の東甫アジア諸国にも波及し、政治経済危機に拡大したもので、この高層ビル着工から2年後の間題。

 ここまでデタラメと言う企業に、よくもODAの資金を50億も出資する気になったものである。しかも、もしこのまま現地法人が倒産でもすれば、融資ではなく出資である以上、20数億円は戻って来ない。