環境と農業
自然と農業の関係(続編その2)

平成13年12月11日
日本青年社 群馬県本部 須 賀 和 男

 私たち人間をはじめ、草食性の動物は、この植物体が成長する過程で作られる葉や茎、あるいは根などの各器官や最後の子実を食料として利用している。(人間だけは繊維として利用するなど、食料以外の用途も発見し利用してきました。)その草食動物を肉食性の動物が食うという食物連鎖で、生物世界は構成されている。ですから、この生物世界を基本的に支えているのは光合成作用だといっていいのですが、太陽エネルギーもそして二酸化炭素も、これは地球が存在する限りあるという意味で無限にあるといってよく、植物の成長に不可欠な水も、海水、蒸発、雨、海水という循環をしているのですから、地球全体としては一定量必ずあるといっていいのです。ということは植物は資源としてはいくらでも再生できるということです。農業はこの再生可能な資源である植物の利用でなりたっています。この点が有限で再生可能な、その意味ではいつかは枯渇する事を心配しなければならない資源に材料の多くを負っている工業とは、決定的に違うところです。

 農業でも現代農業は、化学肥料、合成農薬、機械など近代工業の生産物を多く利用するようになりました。この再生不可能な資源に農業も依存するようになったことが、1つの大きな問題を現代農業に投げかけています。農業生産活動は、環境を良好な状態で維持し、物質環境等の動き通して、国土や環境の保全に寄与するという機能を有する一方で、資源等の外部からの投入によって環境に負荷を与えるという一面もある。我が国では、かつては作物残さ、堆きゅう肥の農地への還元など、狭い地域の範囲内で物質環境の流れを活用した農業が行われていた。だが、その後、農薬、化学肥料の投入量が昭和40年代から大幅に増加する一方で資材の普及に加え、畜産農家、耕種農家の専業化が進み両者の分布地域に大幅に偏りが生じてきたこと等を背景に、水稲作をはじめとして農作物の残さ、堆きゅう肥等の農地還元が減少している。

 さらに石油などエネルギーの投入や輸入飼料が増加するなど、農業をめぐる物質環境の範囲が拡大するとともに、農業生産が外部から供給される資源に大きく依存するようになった。作物は土壌から養分を吸って成長するのですから、作物が収穫され、消費地に運ばれて消費されてしまうと、それだけその農地の養分はなくなってしまうことになります。また、微生物相も変わり、土壌の物理性も変化します。同じ作物を1つの畑でつくり続けると、収量が低下したり病虫害が発生したりします。これを連作障害といいますが、連作障害を起こさないようにするためには、作物が奪ったものは補給されなければならないし、悪化した物理性などは修正されなければなりません。生態系を保全する生産方法でなければ農業自体が成り立たなくなるし、農業が健全に営まれていれば生態系は保全されるということです。土地を再生可能な資源として利用する農業の特性です。化学肥料、農業も、その適度な利用はこの「自然的生産過程」のスムーズな進行を助けることになるのですが、適度な利用は逆にその進行をさまたげ、農業公害問題を生むことになります。

 過ぎたるは及ばざる如しですが、先進国では日本もふくめ、いまそれが問題になっており、適度な利用をあらため環境保全型農業にしていくことが課題になっています。

 日本の農業は狭い耕地面積をフルに利用しながら生産性をめいいっぱい引き出し、農業生産を拡大するための、いわば効率至上の農法が招いたものである。しかし、そのマイナス現象が、環境に与える負荷の増大となってハネ返ってきた。もともと農業とは、大気、土壌、水系、生産相など環境をめぐる大きな物質環境の流れの中で、これを巧みに利用して食物の生産を行う、工業とは異なる特色をもつ生命産業である。その物質環境の流れを肥料、農薬、エネルギー多投型の農業が自らの手で破壊、汚染している。21世紀を迎えた今、日本の農業も真剣に環境問題を考える時期がきている。