日本の農業の危機

 

平成13年7月2日
日本青年社 群馬県本部 須 賀 和 男

 日本の農業の危機が訴えられて久しい。

 農業基本法がつくられた1961年から、ずっと「危機」が叫ばれ続けてきた。コメの市場開放、食管制度の変貌、農薬、化学肥料による環境汚染、担い手の高齢化が進み、日本の農業に未来はあるのか,、自分で農業をしていていつも感じている問題である。

  日本は、国民生活や生産活動に不可欠な主用資源の大部分とエネルギーの9割近くを外国に依存して、食糧の半分以上を海外に依存しており、これらの物資の入手のために必要な外貨を輸出や海外投資収益などで得なければならない国土条件の上に成り立っている。だから自由貿易体制を維持し、国際分業や国際間の産業協力を推進する必要がある、といった議論だ。たしかにわが国は急き石油や鉄鉱石など、今日の経済活動、とくに工業生産の原材料を供給する鉱物資源に乏しい国である。これらの資源を輸入するためには、輸出で外貨をかせぐことが必要だというのも、そのとおりである。が、今日輸入に多くを依存している物資のすべてが、国内資源が乏しく、国内で供給が出来ないから輸入しなければならないのかというと、そうではなく、エネルギーにしても、石炭がないわけではない。資源としての石炭はあるが、炭鉱が閉鎖されて掘っていないだけなのだ。農業についてもそうだ。食糧の半分以上を海外に依存している。

 減反政策という言葉を聞いたことがあるだろうか。いまコメの国内生産は1000万トンはできるというのに、国の農政は、つくってはならないとされている。農地は遊んでいるのです。たとえば、コメが生産過剰となるたびに、農政はまた別な規制を農民に求める一方で、補助金、助成金の類いをふるまい、実態をつくろってきた。

  この1年間作付されなかった農地が16万6000ヘクタール、何年間も作付されず荒地状態になってしまった農地が21万7000ヘクタールになっている。日本は国土が狭小かつ山が多いので耕地が少ない、と昔からいわれ続けてきたが、その貴重な耕地が40万ヘクタール近く『日本の総農地面積の約7%』も遊んでいるのです。資源小国だから食糧の半分以上を海外に依存しているのではなく、逆に食糧の半分以上を海外に依存することになった結果が、貴重な土地資源を遊ばせることにしてしまった。   

  世界のコメ生産量は、年間約5億トン。アメリカ、タイ、オーストラリアなどの2、3、の国を除き、ほとんどが国内で消費される。過去の実績から見て総生産量の3%前後、1300万トン程度が輸出にまわされている。輸入国は中近東諸国とインドネシア、マレーシア、など外貨準備の乏しいアジア、アフリカの途上国である。それでなくても品薄のコメを日本が大量に買い付けるならば、国際価格の値上がりは必至だ。いわば社会の『安全装置』扱いをされている。コメはデリケートな政治財でもあるのだ。

 ちょっと古い話しだが、農政審議会が、戦争とか、世界的な大凶作で長期的に食糧輸入がゼロという実態が続いても、耕地550万ヘクタールで一人一日1994キロカロリー、620万ヘクタールで2243キロカロリーの栄養補給を行なう能力を日本農業はもっているという数字を発表したことがある。今日の現実はどうかというと、一人一日当たり2622キロカロリーの供給栄養量のなかで国産農産物が供給しているのはその46%、1206キロカロリーしかありません。(数字は1991年)つまり、日本の食料自給率は46%ということです。さきの数字と現状の数字との間には、ものすごく大きなギャップがあるというべきでしょう。

 そして食の洋風化で、肉類の輸入が増えるとともに、国産乳、肉、卵の「原料」である飼料穀物の大部分が輸入されている。また大豆、なたねなど油糧穀物の輸入もふえた。これらで自給率低下原因のおよそ1/3を占めている。コメの安定生産と供給は、日本国民にとってもっとも重要な安全保障問題である。したがって国が農業政策に力を入れるべきで、つぶれそうな銀行に血税を投入しないで日本の農家を助けて欲しいものである。