『農薬で土は弱っている』

 

平成13年5月7日
日本青年社 群馬県本部 須 賀 和 男

 農薬を使うということは作物を植える前に土壌を殺菌する行為にほかなりません。

  土の中のすべての生き物を殺して、人間の思いどおりにすることです。

 土には本来自然から与えられた力(エネルギー)があり、その中のひとつに生物を育む力(機能)があるのです。それを人間は「地力」と呼ぶのですが、この地力が低下することで、作物の成長は悪くなり病気になったりするのです。作物のためといって人間が化成肥料や農薬を散布するのですが、その大半は土が受けているのです。土はそれらの薬品を十分に消化したり、分解したりする機能がまだできていないのです。

 農薬・化成肥料は、近年作られたものですからまだ土の中に分解する微生物が存在していないのです。この様な力のない土からできる作物はひ弱で、環境の変化に負けてすぐに病気になり、病気になればすぐに病原菌を殺すために農薬を使う。使えば使うほど、土は弱り、作物を育てる力は失われるのです。

 農薬によって人間の健康が犯され、環境汚染が始まると言われる原因は、農薬、化成肥料を使い出してからであることは誰でも知っている。人間が健康を欲するならば、真剣に農業のことを知り、考えなければならないのです。我々農家だけにまかせていてはいけないのです。

  皆さんが今の農業に関心を持ち、農業の実態を知ることで、人間には新しい知識が生まれてくるのです。そうした知識から新しい農法が生まれ、人間のために役立つ農業へと発展していくのです。農家は農薬の危険性については知らされていなかったし、とくに危険な農薬については、『農』の後に『薬』という字がつくので、そんなに危険なものだとは思わなかったから、危険だと感じるまでにかなりの時間がかかったのです。本来ならば『農毒薬』としておれば、最初からそれに十分に配慮した使い方をしたと思うのです。化成肥料で作物を育てようとすることから、農薬を使わなければならない結果となったのです。

 もともと化成肥料は作物を育てるために作られたもので、土にとって喜ばしいことではなく、それは今の化成肥料もその使用法も土のことを考えないで、作物を育てることのみ考えて作られているからです。生命は自然から与えられ、自然の恵みによって生かされているのです。土が作物を育て、人間が土を育てる、これが自然の営みなのですが、悲しいことに人間は目先の形や色彩にとらわれて根本を忘れてしまうのです。土が作物を育ててこそ真の作物が育つのですが、今は土を殺して化成肥料「薬」で育てるのですから作物に悪いのはあたりまえです。汚染された作物を人間が食べるのですからバランスの崩れた体となってしまうのです。

そこで安全な有機栽培とか低農薬栽培を実施するのですが、いずれも現実には流通の主導権をとるにいたっていない。安全な食料を消費者は求めており、農薬を使わない作物が出来れば良いのですが、現実は無理なことです。その大きな原因は有機栽培では生産物が儲からないのです。今の慣行農法にくらべて収量が落ち、見た目も悪い。そのうえ値段も高いとなれば流通にのせられないのです。高い野菜は消費者も買わないのです。だから生産者は農薬を使い危険性があっても見た目の良い物を作るのです。しかしこの作物は農薬で見た目が良いのです。

 ちなみに我々農家は自分達が食べる作物は絶対に農薬は使わないのです。


たとえば農薬、化成肥料を使わないで、有機だけで生産できて収量、品質もよければ誰でもその方を買うし、生産者も喜んで作るのですが、経済が伴わない現状ではしかたのないことです。それでも有機栽培、有機栽培といって消費者は何十年も求め続けているにもかかわらず、どこのスーパーに行ってもほとんど農薬で作ったものばかりなのです。

 たとえば今のホウレン草は昔にくらべて養分が何十分の一に落ちているのです。

 皆さんが考えている以上にバランスの崩れた作物は主成分も崩れ、失われているのです。今国の政策は外国の農産物をどんどん輸入して日本の農家を苦しめている、輸入野菜も農薬を使っているのです。とくに中国の野菜は人間の汚物を直にまいているのです。今スーパーに出ている野菜は汚染されいるものだと思ってまちがいではないのです。

 げんに、その野菜を食べて体に回虫がわく人が多いと、あるマスコミが報道しておりました。よく低農薬野菜と表示してますが、これは農薬を十回散布するところを八回に、また八回の所を六回にして低農薬野菜であると称している。これでは農薬の毒性がどれくらいかは消費者にはわかりません。消費者が選択しようとしても散布回数では選択基準にはなりません。微生物の世界も人間の世界も同じなのです。他から菌を持ってこなくても、土着菌の活性化をはかり、よりよく働ける環境を作ることが、本来の農業の形ではないのでしょうか。