エレキ紙芝居 義烈空挺隊の真実

 



エレキ紙芝居 義烈空挺隊の真実
ゴロ画伯ことエレキ紙芝居師・松



 この度は、お招きいただきまして誠にありがとうございます。私、ゴロ画伯こと松村宏と申します。鳥取の米子から夜行バスでこちらに参りました。
 本日の演目は「義烈空挺隊の真実」です。いじめに遭っている守る君と、守る君に誇りを持って生きることを教えるヤオ先輩の話に、沖縄での特攻作戦、義烈空挺隊の真実を入れた込んだエレキ紙芝居です。



守 「なんで僕だけ、こんなひどい目に遭うんだ。僕をいじめて楽しいの?」
そこに人魚の肉を食べて、不老不死になってしまったヤオが現われます。体は十八歳、今は近所の女子高に通っている。
ヤオ 「キミは強くなりたいの?」
守 「はい。強くなりたい……です。 ぜひ教えてください」
ヤオ 「誇りをもつことね。誇りがない人間は弱いのよ。誇りがあれば負けない。負けないコツを教えてあげようか。」
守 「教えてください! 僕は強くなりたいんです」
ヤオ 「例えば、女の子と二人でデートしている時に、悪い奴に絡まれたとするね。君はどうする? ボコボコにやられても、諦めなければ、悪い奴らは諦めて去っていく。君は勝てなかったけれど負けなかった。女の子は君をどう思うかな。絶対感謝してくれるよね」
守 「でも、僕にできるかな」
ヤオ 「大事なのはね、そこまで大切な人がいるかどうかよ。自分が身を投げ出してまで守りたい相手がね。それが誇りの正体なの。守りたい人がいるのは幸せなことだし、その人のために頑張ることができるのよ」



白人による奴隷と植民地支配
ヤオ 「キミはいじめや差別を受けていると思っているみたいだけど、その一番ひどいやつを世界の歴史でなんていうか、知ってる?」
守 「よく……わかりません」
ヤオ 「奴隷と植民地支配。白人が有色人種を一方的に支配して搾取していたの」
守 「あれはいじめなんですか?」
ヤオ 「そんな生やさしいもんじゃない。なにしろ人間と思ってないんだから。白人にとって有色人種は、ヒトモドキね。家畜と同じよ」
守 「酷い話ですね?」
ヤオ 「有色人種のアジアの国々は白人によって、いとも簡単に征服されていった。そこに暮らしていた村人は、伝統的な自給自足の生活は破壊され、餓死者が続出。例えば当時のインドネシアは人口が半分以下になったのよ」
守 「ええ~っ、そんな酷い時代があったなんて」
ヤオ 「これが五〇〇年も続いたの。その中で、完全に独立を守り通したのは日本だけよ」
守 「えっ、そうなんですか?」



日本人が初めて白人に勝った
ヤオ 「日本人が日露戦争で勝利し、白人達もさることながら、有色人種も日本が白人に勝ったことで心を躍らせた。日本は第一次世界大戦後、国際連盟の条文に「人種差別撤廃」を提案、有色人種は大喜びよ。日本は一貫して有色人種の希望の星だったの」
守 「凄い、日本ってそんなに強かったんですか!」
ヤオ 「でもね、これで白人列強国の反感に火をつけてしまった。それが、第二次世界大戦ね」
守 「そういうことだったんですか、日本の戦争って……
ヤオ 「学校の先生はそう教えないからね。逆に、日本がアジアを植民地支配したから、白人から懲らしめられたんだと思ってるでしょ。ずっと人種差別と戦ってきたのは日本なのに、日本軍が悪いせいで、一般国民までひどい目にあったなんて」
守 「はい。そうです」
ヤオ 「そんなの、嘘っぱち。ぜんぜん筋が通らない。そんな白人のいいがかりを戦後七十年以上たっても、まだウソだって言えないんだから、あきれちゃうわね」



艦砲射撃が止むときがあった
ヤオ 「日本軍は真珠湾攻撃で、アメリカに不意打ちを食らわせて、極悪非道だと罵られるけど、じつは民間人を一人も殺傷していない。被害を与えたのは米軍施設と米軍兵だけよ」
守 「そうなんだ!」
ヤオ 「だけどあちらは、兵隊だろうが民間人だろうが、容赦なく殺す。東京大空襲、広島長崎。そこにいたのは兵隊ではなく、兵隊の家族よ。そんなムゴイことができるのは、有色人種ぼ日本人は、人間ではないと思ってるからでしょうね」
守 「本当に酷い!」
ヤオ 「昭和二十年の六月だけで、米軍が沖縄に撃った砲弾や銃弾は六八〇発。アメリカ艦船が地上に向けて、雨あられと打ち込んできたの。沖縄を守る日本の軍人さんたちは、その中で戦ったし、沖縄の民間人は避難を続けたの」
守 「怖すぎる、ボクはぜったい耐えられない、気が狂っちゃう」
ヤオ 「ところが、嵐のような艦砲射撃、砲撃による轟音や地響きが、ピタリと止んで静かになる。そんな瞬間がある。その時だけ住民が安全に移動できる。より海から離れた奥地に逃げるチャンス。それはどういうときだかわかる?」
守 「艦砲射撃が止むとき……なんだろう?」
ヤオ 「日本軍の特攻機が米艦隊にめがけて猛然と突っ込んでいったの。その時、艦砲射撃が止むのね」
守 「なんでそんなことができるんだろう」
ヤオ 「当時の日本人は、日本人がみな兄弟、日本人はみな同胞だという感覚だったわ。殺されるのを黙って見過ごしていたら、いずれ自分だって殺される、自分の家族だって同じ目に合う。日本を守り、沖縄の人達を守るためにね」



空挺隊ついに沖縄へ出撃が決まる
ヤオ 「義烈空挺隊の空挺隊とは、パラシュートで敵の真っただ中に降りて急襲攻撃、敵基地を破壊するという部隊なの」
守 「それって、特攻機よりさらに難易度が高いじゃないですか」
ヤオ 「そおよ。でもね、この空挺隊は凄いのよ。大東亜戦争の緒戦でインドネシアのパレンバンの石油基地を制圧し、経済封鎖されていた日本を救ったの。日本を守るための覚悟を持って猛烈な特訓に耐えてきたからね」
守 「尊敬します」
ヤオ 「奥山隊長以下の空挺隊は、サイパン、硫黄島への突撃が変更になり、ようやく沖縄作戦への出撃が決まり、『義烈』の二文字が与えられたの」奥山隊長を含む義烈空挺隊の一三六名は、昭和二十年五月二十四日の夕方、熊本の「健軍飛行場」から十二機の九七式重爆撃機に分乗、暮れなずむ南の空へ飛び立った。目指すは沖縄の北飛行場と中飛行場。五月になって米軍に奪われた両飛行場には、米軍機が多数駐留、日本軍の特攻作戦を阻むようになっていたのであります。



胴体着陸後に凄まじい成果を上げる
 「二二一一、只今突入」、「入電は……奥山隊長機からです!」隣室に控えていた報道班員や新聞記者らがドッと歓声を上げる。ここで日本軍は米軍の管制官が、慌てて暗号かけないままの電文を次々傍受します。
 アメリカ側は、「読谷飛行場異変あり、繰り返す、読谷飛行場異変あり!」「飛行中の機は着陸するな!」。さらに管制官は飛行中の機を空母に誘導しようとして、機動部隊の位置を暴露する混乱ぶり。もう、てんやわんや、大パニック状態。
だだだだだ! 米軍の対空砲火で、低空で進入してきた義烈空挺隊の双発爆撃機五機のうち、四機がたちまちこれを浴び轟音と共に空中で粉々になる、それでも猛然と襲い掛かる九七式重爆撃機。あっというまに残るは一機のみ。最後に読谷飛行場の滑走路に胴体着陸をした。
 米軍機は次々破壊炎上、燃料集積所も攻撃され七万ガロンのガソリンが焼き払われたのであります。これだけのことをやってのけたのが、義烈空挺隊の十二名です。
 その後、生き残っていた義烈空挺隊員の掃討が開始され、重傷で意識を失っていた一名を除いて、空挺隊の全員が散華されました。



日本は世界史に残る凄いことをやった
守 「凄いや。凄すぎる」
ヤオ 「キミたちは学校で、戦争は絶対いけないことだと教わる。それはそうでしょう。でも、もっといけないことがある。わかる? それは植民地支配され、奴隷にされることなんだ。拒んだら、殺される。自分の大切な家族が奴隷になったり、抵抗して殺されるのを、だまって見ていられる?」。
守 「いえ、ボクも戦いたいです」
ヤオ 「勇気は自分のためには湧いてこないものなの。勇気を出すには、誇りが必要といったわよね。義烈の隊員は誇りを持っていた。その一員である誇り。そして、故郷には自分を誇りに思ってくれる家族がいるしね」
守 「そうか。誇りですね」
ヤオ 「日本は敗戦したけど、アジアアフリカの国々は、白人の支配から独立しようという機運が広まったのよ。これをやったのが日本。世界史に残る、いや人類史上もっともスゴイ出来事だとワタシは思うけどね」
守 「はい。ボクもそう思います!」
ヤオ 「本来の日本人に目覚めることよ。いかに日本人であることが誇らしいか。キミも義烈の隊員と同じ日本人。その一員だということが身に染みて感じられたら、誇り高くいられるはずよ。そうしたら、勇気が湧いてくるんじゃないかしら」
守「はい。勇気が湧いてきました。ヤオ先輩! ありがとうございます。また教えてください! よろしくお願いします!」
おしまい

ゴロ画伯(本名 松村宏)
鳥取県米子市出身。朝日新聞東京本社の報道デザイン部門に約十年在職、そののち漫画家・イラストレーターとして独立。筑紫哲也NEWS23で似顔絵ニュースアニメを制作。映画「おくりびと」などの絵コンテを担当。
二〇一一年から自作のイラストを大型スクリーンに投影して自ら演じて語る「エレキ紙芝居」というステージ活動を始める。これを機に左バッターから右バッターに転向し、日本人の誇りをテーマにフルスイング。「拉致問題」や「空の神兵」をテーマにした作品など、感動実話ドラマを制作、全国各地で上演活動中。