夏季役員会議講演

「言葉の破壊は歴史伝統文化の破壊、即ち國體の破壊へと繋がる」
今上即位二九年七月三十日
中 川 愚 山


【海の日は七月二十日】
 本日は七月三十日の日曜日ですが、先々週には三連休が有りました。三連休の最後、十七日の月曜日は海の日でした。現在、この海の日は三連休の最後の日となっていますが、本来は七月二十日です。
 明治維新がなされた熱気覚めやらぬ明治九年に、時の大帝であられる明治天皇陛下が、東北各地を巡幸され青森から函館を経由され、そして汽船明治丸で横浜港に還幸あそばされたのが明治九年七月二十日であることから、この日を記念して長らく海の記念日と呼んでいましたが、平成七年の祝日法によって海の日と正式に決まりました。
 しかし乍ら、平成十五年の改正祝日法でハッピーマンデーと、連休を増やす為に本来の七月二十日を毎年七月の第三月曜日としました。でも、これでは一体何の為の海の日なのか訳が分かりません。これは明らかな伝統文化の破壊で有ります。
 先程も申しました様に、海の日は本来七月二十日でなければ全く意味が有りません。中には、三連休が増え内需拡大で消費が増大し景気が上がるから良いと言う人も居りますが、これこそ、魂なき繁栄は亡国の一途を辿る、と言う事に繋がるのではないかと危惧しています。
 ですから、海の日を一日も早く本来の七月二十日に戻すべきですが、残念な事に暫くは改正されずに七月の第三月曜日で続く事と思います。
 そこで是非、日本青年社の皆さんは、本来の海の日で有る七月二十日に、我々の父祖が四方を海に囲まれた海洋国家日本を、三千年近く皇室を中心とし連綿と受け継がれて居る事に感謝をしつつ、思いを馳せて戴きたいと思います。

【行幸、行啓、行幸啓、巡幸、還幸】
 私は今の話で、巡幸や還幸と申しました。現在の報道機関全般的に言える事ですが、先月、ある番組を見ましたら、天皇皇后両陛下が何某県に来県されました、と報道していました。これは大変不敬極まりない文言で有ります。
 本来なら、天皇陛下が都を離れて全国各地にお出ましになる事を行幸と申します。意味は、陛下がおわします先々に幸せが訪ずれるからで有ります。皇后陛下や皇太子殿下の場合は行啓と申します。そして、天皇皇后両陛下がおわしますときは行幸啓となります。
 先程の海の日の話の中で巡幸と申しました。明治九年の明治天皇陛下の場合は五十日に及んで東北各地を廻られた様に、一箇所でなく複数箇所おわしますので行く先々で幸せが巡る、と言う事で巡幸となります。
 そして、無事御帰還あそばされることを還幸、帝都に幸せが還ると言う事で還幸となります。天皇陛下が還幸あそばされたと言う様に、我々の祖先は、様々な経験の中から知恵を絞り色々と適切な文言を考えられたのだと思いますが、左様に今は言葉の破壊が進んで居り、それが伝統文化の破壊に繋がり、氣持ちの堕落や亡国に繋がって行くのではないかと思います。

【譲位について】
 言葉の破壊で昨今一番由々しき問題は、生前退位という文言です。生前退位とよく報道機関が言いますが、これも大変不敬極まりない破廉恥な文言で有ります。退くのではなくて今上陛下が御位をお譲りあそばされるのですから、譲位という言葉以外有りません。
 報道機関が、生前退位生前退位と声高に連呼することにより、一般の方々も、退け退けと何か悪い印象として刷り込まれて、陛下の御意向とかけ離れた流れになって行き、正に言葉の破壊が心の破壊に繋がり悪意ある朝敵の作戦が成功しつつあるのかなと言う様に思います。

【すめらみことは苗字に非ず】
 よく、我々保守陣営が天皇家をお守りしなくてはならない、と言う方が居りますが、そもそも我々が陛下を守るのではなく、陛下が日々、彌榮、安寧、平和を御祈りあそばされて我々が陛下に守って頂いて居るのですから、全く逆なのです。
ましてや、天皇家という言葉ですが、例えば松尾家、中川家、天皇家と言うと、何か違和感が有りませんか。松尾や中川は苗字です。では天皇は苗字でしょうか。勿論苗字ではございません。天皇とは御位に対する称号で有って苗字では有りません。ですから、天皇に家を付けて天皇家と言うのは、我々民間人と同じに貶めるための元々存在しなかった造語で有ります。保守論壇の中にも天皇家と言う方が居りますが、私はその事にも憂慮しております。絶対に使ってはいけません。正しくは皇室といいます。御をつけて御皇室という方も居りますが、皇室と言う言葉自体が尊崇の念を込めた言葉ですので、特に御をつける必要は有りません。

【日本に天皇制は存在しない】
 後、由々しき問題が天皇制という文言です。これも保守論壇の方がよく使われる言葉ですが、天皇制は素晴らしい、天皇制は維持すべきだ、いや打破すべきだなどと、天皇制について様々な議論をされる時が有りますが、議論そのものが実は空論で有り、全く意味をなしません。そもそも、我が國には天皇制などと言う制度は存在して居りません。
ご承知の通り、我が国は神武肇国から始まって二六七七年を迎えていますが、制度と言う概念をもって陛下が日本國を統べられた事は一度も有りません。制度というのは人工物ですから、創造する事も変更する事も廃止する事も出来ます。ここに反日勢力の破壊工作がちらついて見えます。
遡る事大正年間に、世界征服を目論んでおりましたコミンテルンのブハーリンや日本共産党の鍋山貞親らが、毎週のように、どうやったら日本という国を転覆させて共産主義国家を樹立させることが出来るか、と言う事を会議していました。しかし乍ら、アジアやヨーロッパ、アフリカ等と違い日本という国は一筋縄では行かない。
それは何故か、天皇が居るからだ、これは邪魔な存在だ、何とかしてこれをやっつけなくてはいけない、と色々文献や資料を探ったときに、天皇性なる言葉を発見しました。この場合の性の字は、立心偏に生まれると書きます。
 正式には天皇陛下の御性格と言います。それが縮まり天皇性です。意味ですが、天皇陛下の御性格は何時如何なる時も我々民草、赤子、臣民を慈しみあそばされ、祖國日本を平らけく、安らけくお導き下さり云々、と言う事です。
 ですが彼等は、この陛下の御性格を顕した素晴らしい言葉を、こともあろうに悪用したのです。よし、この性格の性を制度の制に変えて天皇制にしよう。そして日本には、この天皇制と言う制度があるから差別が生まれて貧困に喘ぎ苦しむ可哀想な人民が出てくるのだ。だから、これを打破し共産主義国家にして皆んなで幸せになろう、と言う戦略を立て流布宣伝を行った結果、悔しいかな今やその成果が表れて居るのかなと思います。
では、何と言えば良いのかと申しますと國體です。天皇陛下を戴く祖國日本のお國柄と言う事で、國體で宜しいので有ります。

【今上陛下と言う以外有り得ない】
 先帝陛下であられる昭和大帝を始め、歴代の陛下は既にお隠れになって居られますので、呼称は昭和天皇、大正天皇で良いのですが、今上陛下のことを平成天皇と言う人が居ます。これも不敬極まりなく有り得ない事です。
平成は元号ですが、諡号でも有ります。今上陛下が神上がられて、おくり名として呼称すべき言葉ですので、今上陛下の御代で有るにも拘わらず平成天皇などとは、とんでもない事で有ります。こちらも言葉の破壊が伝統文化の破壊、そして國體の破壊に繋がる事と危惧して居ります。

【陛下、殿下の称号について】
 現在、多くの報道機関は、陛下や殿下を使わず、皇太子様、秋篠宮さま、酷いのになると美智子皇后などと不敬な呼び方をして居ます。
 元来日本には、苗字や名前を軽々に口にしない、という文化風習が有ります。例えば、皆さんは松尾会長の事を松尾さんとは言わず会長と言いますよね。皆さんが会長と言ったら、松尾会長しか居られない訳ですから、会長と言うだけで通ずるのです。
 同じ様に、我々が陛下や殿下と申せば、大体どのお方なのかが分かるのです。
 尊いお方のお住まいを御殿宮殿と申します。そこに住まわれて居る尊いお方の御尊顔を拝するなんてとんでもない、だから御殿宮殿の下からそっと顔を見上げる位にしましょう。それで、御殿宮殿の下と書いて殿下と申します。
 陛とは御殿宮殿の階段の事で、陛下とは御殿宮殿の階段の下と言う意味です。御殿宮殿の下から見上げる事すらも憚られる尊い尊いお方ですから、御殿宮殿に連なる階段の一番下からそっと見る位にしましょう。それで、御殿宮殿の階段で有る、陛の下と書いて陛下と申します。
 多くの報道機関が、陛下や殿下と言う称号を使わなくなっている事も、由々しき問題で有ります。

【祝祭日からの考察】
 師走に入ると世間はクリスマス一色になって、贈り物は何が良いかなと云う雰囲気になるのですが、二十四日のクリスマスイブの前日、十二月二十三日に最も尊いお方がお生まれになられた日が有ります。
 現在は天皇誕生日と言って居りますが、本来は天長節と申します。もっと丁寧に言いますと天長の佳節と申します。皇后陛下がお生まれになられた日は十月二十日ですが、この晴れの日を地久節と申します。天長節、地久節と先達は申して居りましたが、今は我々一般国民と同じく誕生日と言う様になってしまった事も、伝統文化の破壊が着々と進んでいる証左で有ります。
 同じく二月十四日はバレンタインデーで義理チョコだ本命チョコだと浮かれていますが、その三日前には物凄く大事な日が有りますよね。そう、我々の祖國日本が誕生した日です。今は建国記念日と言って居りますが、本来は紀元節と申します。
 当該地で一番最初に國が肇る事を肇國と申します。それに対し、前王朝を亡ぼして新王朝を建てる事を建国と言います。
 先程、國體についてお話した時にもお伝えしましたが、我々の祖國日本は今から二千六百七十七年前にハツクニシラスホホデヒノスメラミコト即ち神武天皇が、橿原宮で御即位あそばされた事を以って國が肇り紀元となりました。そして、今上陛下で百二十五代の御代が連綿と続いて居ります。その間、一度も王朝交代がなされて居りません。ですから、紀元二千六百七十七年で日本が世界一古い國なのです。二番目に古いデンマーク国で一千年強ですから、如何に日本が彌榮の國かが伺えます。本当に有難いことです。唯々感謝で有ります。
 もう一度申します。建国では無く肇國、建国記念日では無く紀元節なのです。

【結びに】
 本日は、謹み畏みて皇室に因んだ事柄について色々と申し上げさせて頂きました。
 古来より日本は吐く息一つにも魂が宿る、かんながらの道の彌榮の國でございます。この、世界に類を見ない素晴らしい祖國日本を、先人の築かれた歴史伝統を、誇りを持って紡いで行き、次代を担う若い世代に受け継いで行きたいと思って居ります。
 日本青年社社員の皆様に於かれましては、松尾会長を中心に更に一致団結され、祖國日本を良導されん事を心より御願い申し上げます。